ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ93→→→パラグラフ164:見護り手:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



巨大にして威風たなびくヨーコールがあらわれた。
他の巨人族と同じように上半身は裸だ。爆発的と形容したくなるほど膨張した上腕二等筋と、岩塊のごとき胸板が力を誇示している。








その、胸元に。





揺籃の腕に抱かれて、『見護り手』の異様なる深紅の眼窩が俺を見据えていた。
現れたのは矮躯。
しなびた手足と、極端に肥大化した頭部。
それでいて、どこかしら不安を誘う気配。
マグナマンド世界での経験をもとに、もっとも近き存在を検索し、そして愕然とした。
出てきた答えは一つ……(リプレイ 【リプレイ514】 参照)、最古の都市ザーリクスにて遭遇した人の成りそこない。
霊魂と肉をもろともに餌とする食屍鬼、サイ・グールだ。



  予知を身につけていれば、291へ。
  予知を身につけていなければ、152へ。


ほとんど反射的に防御反応をとった。
マグナカイの基本たる予知の精神エネルギーを束ね、収束させた精神の波で支配者の意図を探ろうとした。
不可視の太陽から放射される光線のように、計り知れないほどの力があふれだす。
マグナカイの教えが、全霊で警鐘を鳴らしていた。
おそるべきは、その力の総量。
『見護り手』のたくわえた能力(ちから)は神の領域に近い。


精神的にも、そして――肉体的にも、だ。


つまり矮躯の与える印象は見せかけにすぎない。
老獪な知性と、同時に非人間的かつ超然とした冷酷さを感じとる。
善悪いずれに仕えるものでもない。
そんな世俗の次元をはるかに超越した聖性と、卓抜たる意志力の塊。それこそ『見護り手』だった。
とどのつまりが、この支配者は自分のためにしか力を振るわないのだ。
”満足したかな。カイ・マスターよ”
”『見護り手』”
”来るがよい、余の領域における不思議のいくつか、そしてこの次元における世界の理を披露しよう”
ヨーコールの従者が背を向けて歩きだす。
背後で扉が閉じ、俺もまた広大な『見護り手』の執政室に踏みこんだ。
”客をもてなす機会にめぐまれるなど久しく稀なこと。招待を受けてくれたこと、余もまた光栄に思う”
”何を思う、『見護り手』よ”
”何、とは”
大仰な慇懃さが、かつてない不安をあおっていた。
”お前ほどの超常の者なら、この俺の動機も背景も、すべて把握できているだろうが”
”焦らず、この黄昏界を、ダジャーンを観察せよ。新しき世界の性質を学びとれ。そなたは適応しなければならないのだ……”


“……残された余生を、この地で過ごすために”



(つづく)