ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ317→→→パラグラフ93:奈落の支配者:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



どれほど眠っていたのだろう。
かっと目を開く。
ソファに横たわる俺の真上で――筋骨隆々な巨人の両腕が、俺を押さえつけていた。

 
   317. 
 肩にかけられた力強い手が乱暴に体をゆさぶり、君を眠りからひきはがす。 
 


”なぜ攻撃モーションに入るのだ、小さき者よ”
”俺の心を読むが良い、ヨーコールのリーダーよ。さっさと俺の上から降りろ。さもないと首を捻じ切るぞ”
”おお……これはとんだ誤解を”
アブねえアブねえ。
朝っぱらからウホッ!な展開なんざゴメンこうむるってもんだ。


”『見護り手』が同席を求めておられる ――来るがいい”
”ぼぉ”
――?”
”しまった。寝起きに発して良い声は『ぼぇ』の方でった。でないと萌えない”
”意味がわからない。脳髄まで小さき者よ。ついて来るがいい”
念話で軽快に応酬する。
わりとぐっすり寝れたらしい。この異次元でもバイオリズムは正常そのもの。体内時計が行動の時を告げる。
VIPルームをあとに、6人の守備兵に随行されていく。
昨夜幻視した出口から、磨きぬかれた鋼で舗装される中庭と、中心部にきらめく水晶の砦へ向かう。
政りごとの府なのか、水晶要塞の中はバカ広い吹き抜けホールだった。
莫大な質量を誇るスカイブルーの岩塊から削りだされた、奢侈をきわめた螺旋階段が砦の最中枢を形作っている。
小塔状の屋根へつづく急な階段を、リーダーにつづいて上がっていく。
”おいデカブツ、ゆっくり歩け。歩幅がでけーだろうが”
”何を言う小さき者よ。貴様こそ大股で歩け”
わあわあ喚きつつ300段ほどを登り、ようやく最上部に出た。
廊下の終端、黄金をちりばめた継ぎ目のない黒檀の大扉があり、ヨーコールの門番が控えている。
開門の銅鑼が鳴り、威容にみちた大扉が徐々に開きはじめた。
ついにこのダジャーンの支配者たる『見護り手』と対面だ。思わず武者震いしてしまう。
やはり巨人族の長なのか。
秀でたる膂力と威圧感にみちた、おそるべき相手なのか。
そもそも友好的だろうか――?

 
 おそらくはヨーコールの騎士王であり、たくましい偉丈夫で、常命の思考をこえた 
叡智と理性をそなえた存在だろうと想像できる。こうしたイメージから、彼が探索を 
助けてくれるのではと楽観的に感じだす。 
 


ううむ。
問題は、俺がいまだ丸腰だということ。ヨーコールの騎士王なら武を試すとか言いかねない。
どうしたものかと悩み、開ききった扉の向こうに踏みだし、

 
 しかし、黒い大扉が最終的に開ききったそのとき、それらの願いは打ち砕かれる―― 
彼の姿は骨の髄まであなたに衝撃をたたきこむ。 
 


まさしく、『見護り手』の姿に衝撃を受けてたじろいだ。

(つづく)