ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ232→→→パラグラフ287:3倍速toバレッタ:(死亡・8)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



旅籠の主人、悪人面のコラニス氏に金貨5枚を払って宿と食事を確保し、飯を食いだしたその時、盛大な音とともに扉が開く。
―― そうでした。
すっかり忘れていた。あのアホ貴族様の存在を。
だが、一つだけ違う点がある。



・弓を持っていれば、301へ。
・弓を持っていなければ、78へ。


「愚か者めッ!この俺に歯向かうとはッ!!」
何やら老人に向かって奇声を発しているのを横目に、念入りに弓の調整を済ませる俺。
揺れる明かりの中、狙いを定めておく。
弦を弾き、矢羽を撫で付け、ちょいと商人の肩を突いて射線から逸らしてやり――


君はカイ・マスターの名にふさわしい素早い動作で矢を番え、放った。
矢は剣を振り下ろそうとした貴族の腕を貫き、剣は老人には当たらず床に刺さった。


一発必中。
矢は無駄にするもんじゃあない、というお手本のような一射だった。
傭兵たちは拍手喝采、俺の腕を褒め称える。
情けない悲鳴をあげて振り返り、矢が刺さったままの腕を押さえて貴族が叫ぶ。
「畜生!俺はアモリーの貴族ロークだ!覚えておけ!」
別に答える必要もない。夜闇に逃れ出る後ろ姿に手を振って見送り、老人を助け起こす。
助け起こした老人―― シリルスの話を聞いて、俺は今度こそ正体を明かすことにした。
さもないと、このご老体はツンデレ化して目も当てられないことになるからな。
『た、旅を手伝ってあげるけど勘違いしないでよねッ!あんたに情報を教えると決めたわけじゃないからねッ!?』
………………………!!!


「ローン・ウルフ」
彼は信じられないという風に弱々しく目を見開いた。
「お噂はかねがね伺っております。
何か特別な理由でロアストーン を探していらっしゃるのでしょう」


「噂?宇宙のハテを知らねーように…そんな噂知らねー」
「ロ…ローン・ウルフ?」


「それ以上「何?」って聞き返しても殺すッ!クシャミしても殺すッ!黙ってても殺すッ!あとで嘘を言ったと分かったら、また殺すッ!」
「ヒ…ヒィィッ!」


薄暗いカンテラの灯りに顔を照らされ、老人はチワワのようにプルプル震えながら(多分老衰だろう)洗いざらいうたった。
ただ一つ、惜しむらくは……
傭兵の話と何ら変わるところがなかった、ということか――――
(寧ろ正確には、この期に及んで「ブラス街の賢者」の話を伏せるシリルスの方が情報量が少ない。)



翌朝。
老人を馬の背に乗せて飛ぶようにバレッタ丘陵を駆ける。
メイド・イン・ヘブン――
3倍速で時間を早送りして移動しているため、老人の顎髭は本人も気づかぬうちに伸び放題だ。
弓技大会はやはりパス。
弓持ってるし。あと金貨が残り2枚しか無いし。
いかな神々とて大会に出て文無しになれとは言うまい。
デンカ料金所手前の下り坂で通常の時間の流れに戻る。
振り返ると、老人は火をつけそこなってパイプの中身を顔面にブチ撒けたところだった。
「こんな……平和が、ふぇ、ふぇ、ふぇぷしぶるーッ!!」
律儀に平和がどうとかのたまうあたり、見事なプロ意識に萌えた。
さて。
料金所の待ち伏せに対応するオプションを検討する。



1.上級狩猟術を使って奇襲の一撃をかわし戦闘。
2.酒屋に行って酒を頂戴する。
3.パン屋に行ってパンを頂戴する。


「パン屋にしてみるか……ペンペン草以外の食い物も久しぶりだしな……」
2度目なだけに、どこまでも緊張感の緩い俺だった。

(つづく)