新春対談2 萌えゲームブックを語る デストラップ・ダンジョン解析編


そんなこんなでプチ対談も二晩目。
本日のお題は『死のワナの地下迷宮』のリメイク、『デストラップ・ダンジョン』です。



悪魔的頭脳の持ち主、サカムビット公が考案したファングの町の大迷宮。
ワナと怪物がひそむ大迷宮は、勝利者に莫大な富と名誉を約する。
この迷宮探検競技で、君は他の挑戦者を退け、最初の生還者とならねばならない。


FFシリーズの中心となるタイタン世界を舞台にした、ダンジョンアドベンチャーの名作。
オーソドックスでありながら、歯ごたえのあるゲームブックです。


朕「BOB先生は『ハウス・オブ・ヘル』よりこっちが好きなんだろ?」
B「んぁ?なんでんじゃい」
朕「お前の大好きなクイーンズブレイド(以下QB)の絵師、空中幼彩氏の挿絵じゃん」
B「うぬぬ。主人公あらためヒロインが、幼児体型のロリ剣士に変更されているからねえ。ぶっちゃけほぼ全裸」
朕「……まあ挑戦者仲間の戦士もトラのパンツ一丁のマッチョイラストですがね」
B「全員女体化するかと思ってたら意外に男が残っててビビッタ!」
朕「………………」

1「デストラップ・ダンジョン」解析

さて、実際の中身ですが、こちらは『ハウス・オブ・ヘル』に比べてかなり変更がほどこされています。
敵の強さなどの数値は変更なし、パラグラフも変更なしですが、イベント時の数値の増減が調整されているのです。
具体的には以下の五箇所。


パラグラフ26 体力点−2 → 技術点−2
パラグラフ33 体力点−3 → 技術点−3
パラグラフ150 体力点−1 → 技術点−1
パラグラフ223 運 点−2 → 運点は減らない
パラグラフ271 技術点−2 → 技術点−1

技術点とは、いわゆるキャラクターの戦闘力・攻撃力のようなもの。
イベントの度に増減する体力点と違い、めったに回復の機会を与えられない技術点の減るシーンがかなり増えているのです。
特に本作は、もともと敵の技術点が高いので、こっちの技術点が減ると戦闘が一気に不利になります。
これは正直難易度をムダにあげるだけで、不思議なところ。


B「正直変更理由が分からないんだよな。たしかに腕を怪我するシーンとかなんだけど、原書がこうなのか、調整なのか」
朕「調整というなら、正直、敵の攻撃力を低く修正して欲しかった」
B「けどまあ、気になるのはそのぐらいかな」
朕「イラストは?」
B「空中幼彩氏のイラストはかなりポインツ高いでぇ。俺様ちゃんのハートをがっちりゲットやでぇ〜!」


【旧作から新作へのキャラアレンジ】

誰がどのキャラに相当しているのか、お分かりでしょうか。
左が旧作版。
中央がニンジャ、その右から順に蛮人、女エルフ、騎士です。
完全にクイーンズブレイド世界になっていますね。
  新

朕「まあエロイの好きだからねBOB先生は……」
B「違うわボケ!見せることにかなりこだわっているんだよ!」
朕「といいますと?」
B「萌えイラのほかに、原作に忠実な構図や、シーン・状況の解説になるイラストなど、場面ごとに描き分けられているのだ!」
  新版イラスト。原作へのリスペクトを感じさせます        
朕「なるほどね」
B「上に比較した脱出目前でのノームの試練なんか、かなりカッコいい感じの仕上がりだぜ」
朕「なるほど。本文との相乗効果が高まるってことか」
B「むろんエロスこそ絶対にして必然の条件だけどな!」
朕「はあそうですか。ちなみに今回の改変で、もっとも気に入ったシーンはどこ?」
B「フッ愚問だな。パラグラフ384だ!」


        389

すべての武器を話すと、無防備で不安な気分になった。
とりわけ、剣を持っていないのは、まるで裸になったような
気分で落ち着かない。
技術点、マイナス4。
間違ったことをしたのではないかと思いつつ、先へ進む。
181へ。


(参照イラストは口絵より)

B「現代によみがえった80年代ヴァリスビキニアーマー戦士!見よ、この極限まで切り詰めた裸体……じゃねえ、布地を!」
朕「あ、あー……」
B「このイラストから、さらに剣を脳内消去してみろ!こいつをどう思う?!」
朕「すごく……て何?萌エロですとか言わされる局面なの?」
B「こんな女が丸腰で地下迷宮をウロウロしてりゃ、そりゃ二次元ドリームな展開だって待ってるっつー話だ!」
朕「……………………」


そんなわけで、鉛筆とメモを手に遊んでみようと思う冒険者諸兄にアドバイスをまとめました。
ちなみに、ハウス・オブ・ヘルとの比較では、ありがちなファンタジーRPGであるこっちの方が遊びやすいでしょう。
反面(戦闘の)難易度は、こちらがはるかに高めです。


「デストラップ・ダンジョン」攻略ヒント

ファングの迷宮には巧妙な死のワナが幾重にもはりめぐらされています、
初見クリアをめざす人以外は、一つ一つフラグ解除し、迷宮を把握していきましょう。
多くの人が詰まるのは2箇所でしょう。
ブラッドビースト戦と、最後の試練です。ここの対処法をとにかく探すこと。


・モンスターの知識や探索のヒント入手のチャンスは決して逃すな。
 戦士フィリアの脳には残念なことに筋肉が詰まっています。さりとて剣だけでは解決できません。
・蛮人とは一緒に行動するように。別れたら 死 に ま す。
・蛮人に出会うまでに”通り抜け”必須アイテムの2つを入手してください。


また、敵の技術点がかなり高めで、戦闘はきびしい筈。
負けまくってイライラするぐらいなら、技術点を10以上にして遊びましょう。
(初心者推奨は技術点11以上)


さあ、ページをめくりたまえ

2止まった時の世界(ゲームブック)へ入門したいあなたへ

朕「2冊とも解析してみましたが、どうですか。ホビージャパンの新作ゲームブックは」
B「かなり良いと思う。古参読者・旧作に対するリスペクトもきちんと含んでいるし、なにより装丁がすばらしい」
朕「それはBOB先生言うところのエロンチャ*1という意味で?」
B「違うわ馬鹿ー!」


BOB先生いわく。
かつての読者、新しい読者のどちらもが、どんなジャンルの本か一目で分かる装丁が良いとのこと。
所詮、ゲームブックは80年代中期の、5年足らずで終わったブーム。
現在のフォロワーはもはやごく少数です。
さらに版権の都合か、タイトルが旧作と違うため、昔のファンをすらとりこぼす可能性も大きい。
そのリスクを最小限に抑え、書店で手にとってもらう、興味をひいてもらうための当たり前の配慮が随所にあります。
たとえば帯の文言にもそうした工夫がみてとれます。


遊べるノベル
ゲームブック」を体験せよ

(さらに文字の右上に大きく『名作』『傑作』のメダルマーク入り)

B「まず『遊べる本』だと強調して、店頭で手に取ったクイーンズブレイドファンを取りこもうとしてるね」
朕「さらにゲームブックだと明記、旧作ファンにも気づいてもらう努力をしてるのか……」
B「丁寧に、背表紙にもゲームブックって表記されてるぜ」
朕「おお。これなら、平積みでも書棚に並んでいても、目が届く可能性が高まりますね」
B「それだけじゃない。裏表紙にはあらすじもきちんと書かれているから、気になって確認すればゲームブックだと一目で理解できるわけだ。仮にビニール包装されていても……な」
朕「……成程」


もちろん、裏表紙も帯も、他のホビージャパンラノベレーベルと同じ仕様だから、というのはあるでしょう。
しかしそれでも、分かりにくい、ニッチジャンルを売るための努力がここにはあるのです。
新しい読者を取り込もうとする努力。
昔の読者に気づいてもらうための努力。
ただコレクターズアイテムで、本棚に並べて終わりじゃなく、遊んでもらって、もっと次を求めてもらえるための努力。
そういった熱意のようなものを、より強く感じます。


B「もっと言えば、アキバblogやHJの自サイトで宣伝を打ったり、ネットでの広報だってかなりマメに行っている」
朕「金があるからだ……と切り捨てることもできるけど、Amazon中心に本を購入する人も多い昨今、その辺宣伝なんかはまさに重要だね」
B「正直、クイーンズブレイドほど売れないとは思う。でも、普及するための努力を自ら積極的に行うホビージャパンをみていると、応援したくなる……というのは、まあ、ファンの心情じゃね?」
朕「実際、うちも含めてゲームブック系の個人ブログで一通り取り上げられてもいるしねえ」
B「昨日も言ったけど、続編が出たら買いたいってのはその辺も含んでのこと。もっと新作を見てみたい、って気になる」
朕「旧作や、創土社の新作GBに手を伸ばす読者が増えるといいですね」
B「今はゲームブックの老舗まとめサイトが随所にあるからね。いろいろ見て回るのもアリかと」
朕「4年ほど前にゲームブックの偉い人リンクをまとめました。ご参考までに」


今回の萌えゲームブックの元祖、FFシリーズに興味をもったのならやってみよう 見てみよう!様のゲームブック大辞典なども参考になるはずです。
また、社会思想新社様では、33巻以降のFFシリーズを自主翻訳、研究されています。
こうしたサイトを見るにつけ、FFシリーズの人気を改めて実感せずにはいられません。

*1:エロスとやんちゃの融合。いずれにしてもロクでもない

2ゲームブック入手サイト一覧

ただ、実際に旧作品を購入するには、古書店街を回ったりオークションに手を出す必要があります。
遊びだすまでの敷居がけっこう高いのも事実。
そこで、朕とBOB御大がよく使う中古ゲームブックの通販サイトを2つオススメしておきます。


古本の通販ショップ オンライン古本屋かえる堂
定期的に更新され、ゲームブッカーも驚く掘り出し物が出たりもするサイトです。
TRPG関連の古書もよく更新されます。


ゲーム探偵団 中古ゲームブック
レトロゲー全般を扱う通販サイト。
ゲームブックのジャンルを置いて、かなりマニアックな商品も置いてあります。
時期によって同人ゲームブックも並んでいます。

3ゲームブックリプレイ一覧

最後に、手軽にゲームブックのプレイ感覚を楽しめる、リプレイサイトを再度あげておきます。
2007年新春対談 GBリプレイブログまとめ
朕「今頃ソーサリー様は去年からまた不定期に再開しているからね。続きが楽しみなところです」


B「うちのローンウルフ・リプレイも未訳巻に突入してじき2年ぐらいじゃね?」
朕「後発組のはずが、いつのまにやら一番長いリプレイシリーズになっているようで……読者の方々には感謝しきりです」
B「ことによると、ローン・ウルフもHJから萌え絵で復活するかも知れんし!」
朕「そうだねえ……今後に期待ということで」
B「復刊の暁にはイラストはSABE先生*1か砂先生*2でお願いしたいッ!」
朕「(………………最悪なまとめだ!)」

*1:アフタヌーンで描いてたこともある漫画家さん。暴力衝動の権化のような美少女が破壊の限りを尽くす作風で知られる。クロスオーバー作品にローンウルフよろしくパーカーのフードをかぶった「フード女」が登場する。

*2:東大法学部卒の漫画家さん。やはりインテリの登場人物が最終的にみさくら語ばりの頓痴気ワードを口走る作風で知られる。BOB先生のフェイバリット漫画家の一人。