本文第40話より

「我々はシドニー国際空港に到着した。
(中略)
 おれとフローラは予てからの手筈通り、ブルーマウンテンズの一角にある秘密のトンネルへと潜入した。地下基地に通じるリニア・ラインの一本である。ここでお迎えが来る予定だ。
 何かの乗り物が近づいて来る音が聞こえ、おれとフローラはライトで照らされた。見たこともない宙を浮く奇妙な乗り物に乗って、早速迎えの者がやって来た。時間通りだ。白衣を着てるから科学者なのだろう。彼は降りて来るなりおれに向かって言った。
「やあ、君達がマリン君とフローラ君だね?案内するから乗ってくれ」
「合言葉はいいのか?」
「そんなものはもう必要なかろう。分かり切ってることだし」
「それもそうだな」
 ……さては計画がバレて、迎えの者は途中で捕まったか?
 おれは適当に相槌を打ち、そいつを先に歩かせてから、いきなり背中を蹴っ飛ばした。
「マリン!」手荒な真似はやめて、とフローラが目で訴えていた。」