本文第1話より

「おれがアレに初めて出会ったのは、岐阜県舟山でだ。なぜおれが、おれだけがアレに出会ったのかは分からない。誰にも見つからず、今現在に至るまで永い間保存されていたことが、信じられない。だが今となっては、論理など役に立たないのだ。論理とは、昨日まで無かったのだから明日も無い、と証明するだけの代物だ。だが、これは現実だ。
(中略)
あの出会いは偶然だったのか、それともアレがおれを選んだのか。真相は誰にも分からない。ただ一つ、これだけははっきりと言える。当時のおれは、全世界で他の誰よりも、異常に「力」に執着していた。常に恐れよりも、憎しみがおれを突き動かしていた。だからこそ、あの雷の中でも、雷の力強さに憧れその神秘にあやかりたかったから、あんな大胆な行動ができたのだ。」