ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

迫る宵闇のなか監視塔が浮かびあがる

【パラグラフ175→→→パラグラフ244:最悪の脅威?:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



もはや狼に迷いはない。
ソマースウォード を佩いていないことを除けば、この14番目の狼は最強の能力値を誇るのだ。
獣性のまま雄叫びを迸らせ、バシュナのナイフ を抜き放った。
殺気だった視線で隘路一帯を睥睨し、槍騎兵のごとく突撃をかける。
待ち伏せの疑いはいまや確実なものだった。
聳える監視塔の胸壁にはただ一本の旗もはためかず、銃眼から警備兵の姿も見えない。
隘路には衣服や小物が散らばり、着のみ着のまま人々が逃げたかのようだ。

 
 危険が迫っていると本能に警告され、君は馬に拍車を入れてゆるい駆け足へと移りかける― 
―そのとき突然、悪夢の産物さながらに、狼に跨ったジャークの軍勢が、建ち並ぶ無人の小屋 
の小屋の後ろに広がる暗い隠れ場所から溢れ、飛びだしてきた。 
 敵はあらゆる方向から咆哮をあげて威嚇し、金切り声とともに手にした槍を暗くなっていく 
空に突きだす。 
 


「……」
「…………」





待ち伏せの招待は、貧相なジャーク軍の大部隊だった。
見たところ200人程度の大隊だろうか。それが丘という丘を、小屋という小屋を、一面覆い尽くす。
最悪の脅威の登場……
そう思え……


……がっかりしてるところを見せるんじゃあねーぜ!!


「わァー……待ち伏せだー(棒読み」
「やべェー…バネドンどうするー?(棒読み)」
意気軒昂と天を突く無数のジャークの槍を、ボヘラーッと眺める俺ら。
一応驚いて見せやったことだし、ユルいのは勘弁して頂きたい。
何しろ敵はジャークだ。
つい先日、武器も抜かずに眼力で頓死させた塵芥のような連中なのだ。
どれだけ集まっても烏合の衆。
9巻前後から読みだした読者のため一応の解説を加えるなら、マグナマンド最弱の戦士がジャークなのだ。
1巻からの平均戦闘力点6点、いまやダークロード軍でも使い捨ての奴隷階級にすぎず、兎に角数の原理で押し寄せるだけの雑魚だ。
ぶっちぎりでヒエラルキー最下層を突っ走るキング・オブ・虚弱。
カイ・マスターの眼力だけで気死しかねない連中と、いわゆる一つのソマーランド最強コンビの真剣対決。
本気になれという方が無理な話だった。
「弓使えよローン・ウルフ、さっさと片つけよう」
「やだよ…矢が勿体無い。どうしてもってんならバネドン金出せよ。一本金貨2枚な」
「はァァ?昨日シャディの村で夕飯奢ってやったじゃあないの」
「ンーフゥーン?知らんなァァァ。2度目ってことでギューク亭での描写は省いたし、俺」
「汚いぞローン・ウルフ!このハイエナ野郎!」
逃げてもよかったが、乱数表を要求されるのが頂けない。運悪く掠り傷でも負ったら狼の沽券にかかわる。
無傷で勝って当然の相手だ。
雲霞のごとく押し寄せる軍勢を前に溜息をつき、本文の敵表記に目を走らせる。



ドゥームオオカミ 戦闘力点18 体力点26
動物コントロールを身につけていれば、戦闘のあいだ、戦闘力点が2点高くなる。


・3回戦までに戦いに勝ったら、306へ。
・それよりも多くかかったら、148へ。


万が一に備えて指を挟んでから戦闘シーンをのぞいたが、そんな自分がバカだと思えるような相手だった。
「3回戦以内に倒せなければ」なんて本文の脅し文句もどこ吹く風。
素の戦闘力19点を有す最強狼と、最弱オオカミの戦の火蓋がきって落とされる。
馬上での戦いゆえ、動物コントロールの+2を足して彼我の戦闘比は+7。もはや戦いではなく蹂躙の世界だ。
……そして、歴戦の狼もバカではない。
こういう前フリは往々にして死亡フラグが立つもの、その対策も十分だ。
ここで、乱数表の出目に左右されない必勝の手を期す。
本来ただの念撃(戦闘力+2)で良い相手に対し、一回戦のみ、体力を2点消費して念波動(+4)を撃ちこむ。
これにより一回戦は戦闘比+11以上、33%の確率で一撃死を見舞いうる最上のコンディション。
2回戦以降も戦闘比+9となり、3回戦内の勝率は99.9%に及ぶのだ。
油断せず、青い怨嗟の焔を放つバシュナのナイフ を鞘ばしらせる。


「じゃあさらりと行こうか、ローン・ウルフ。華もない雑魚退治だが」
「ハッ!付いて来いよ、バネドン!」


旧友同士が肩を並べて戦うのは、実にバサゴニアでの戦い以来だ。
不敵に笑みを交わし、最強のコンビネーションが、烈火怒涛と持てる絶技で野獣の大波を切り崩す……ッ!
意識を集中させ、閃くように3度、乱数表を突き刺した。

(つづく)