ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ233→→→パラグラフ312:夜襲:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



一瞬で覚醒し、毛布をはね除けて立ち上がる。
手は既に幅広剣にかかっていた。
土砂降りの豪雨に目を凝らすと、闇夜の中、寺院跡を包囲した騎影が見える。
不意に豪雨のベールを突き破り、一本の矢が唸りをあげた。
見張りの兵の悲鳴が雨音を掻き消す。
「円陣を作れ!背後を守るんだ!ナインは5名を率いて巡礼者を守れ!」
互いの顔も見分けの付かぬ暗闇の中、矢継ぎ早に指示を下す。
隊員はすぐさま武器と盾を手に寺院の濡れた床に伏せ、盾を並べて防御姿勢をとった。
矢による攻撃が止み、石の床に足音を反響させつつ、派手な赤い鎧の山賊10人が背後から倒れた柱を乗り越えてきた。
二人の隊員が立ちはだかるものの、リーダーと思しき凶悪な面構えの男が幅広剣で薙ぎ払い、一撃で切り倒されてしまう。
俺と男の視線が絡み合った。
俺の掲げた盾は正面から血塗れた幅広剣を受けとめ、金属と金属が噛みあって鈍い音とともに火花を散らす。



山賊 戦闘力点17 体力点26


戦闘比は マイナス3 、有利な数字では無い。
空腹のダメージで体力も21点まで低下している。
だからこそ、俺は腹をくくって戦いに臨んだ。
ダメージを喰らうのは承知の上で敵の防御を打ち崩し、立て続けに二度斬撃を浴びせる。
乱数表であれ、ダイスであれ……
覚悟を決めて戦う者に、おのずから勝機はもたらされるものなのだ。



体力点6点 を失いつつも、とどめの一撃を加えると敵の瞳から光が消えた。
周囲は一面の喚声と怒号に満たされ、時折闇に弾ける剣戟の火花が視界を眩ませる。
転がる山賊の死体を踏み越え、ようやく副官のダローを見つけだした。
「奴らはただの山賊ではありません!まるで正規兵のように統率が取れています!」
「ワイルドランドの無法者が知る筈のない戦術を駆使しているな!」
耳元で怒鳴りあい、ふと疑問が浮かんだ。
誰が戦術を教えこんだにせよ、この程度の数では勝ち目など無い筈だ。
だとしたら、奴らの狙いは別に……
「馬だ!ダロー、この場は任せるぞ!」
手近な兵を引きつれて廃墟を駈け抜けた俺は、既に馬を取り囲んでいた山賊に突撃をかけた。
激しく攻めたてて敵を怯ませ、何とか退かせることに成功する。
だが……



「守れたのは11頭きりでした」
「残りの馬はすべて山賊に持って行かれたようです」
内心、俺はほぞを噛む思いだった。
馬無しでは、これ以上【襲撃者の道】を進めるはずもない。
無傷の兵を40名以上温存しておきながら、俺はこの先10名の兵しか連れて行けなくなったのだ。
聖職者の二人を守りきれたのが、せめてもの救いだった。
―― 長い夜が白々と明けていく。
徒歩でホルムガードへ戻っていく者たちの後ろ姿は、この先の任務の厳しさを暗示していた。

(つづく)