ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

王都は目の前だというのに

【パラグラフ299→→→118:地の底深くへ:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



ふと表情を和らげたライガー提督は、道端に座ってナップザックからパンと干し肉を差し出した。
「休息しよう、ローン・ウルフ。無理にでも食べておくことだ」
感謝を述べ、少しでも体力を取り戻そうと食物を口に押し込んでいく。
が、ふと気づくと提督の分がない。
「総督は食事されないのですか?」
「食事はその一食きりだ。というのも、君は一人でターナリンのトンネルに入らねばならないからだ。選択の余地はない。君が体力を回復するのだ」
毅然とした言葉に、予感が走った。
提督は待ち伏せどころか、さらにその先、挟み撃ちの可能性にまで備え、ここで敵を食い止めるつもりなのだ。
いや、食い止めるという表現は正確ではない。
俺も総督も、ヘルガストに立ち向かう手段を持たない。つまりは……


言うべき言葉を見つけられないまま、俺は立ち上がった。
「必ずや、ソマースウォード を祖国へ」
「………カイ戦士の誇りにかけて、必ず」
二度目の握手は、総督の力に負けないくらい強く握り返した。



そして、俺は一人、地の底からの冷気を感じつつ、仄暗いターナリンのトンネルへと入っていった。
おぼろに揺らぐ松明は暗闇をより濃くし、数メートル先を見るのがやっとだ。
自分の影にさえ神経をすり減らし、地底を貫く果てしない通廊を下っていった。
果物を満載したまま放置された荷馬車が、異様な雰囲気を醸し出す。


30分ほど歩いただろうか。視野の先に、ほんの一瞬だが石柱の影が揺らいだ。
全身に緊張が走る。

(つづく)