ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

nacht_musik2005-08-11

【パラグラフ118→→→31:意外な救援:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



それは奇妙な生き物だった。
60センチほどの背丈で、外見は沼ネズミのそれ。パッチワークをした革のチョッキを着て、木製の槍を手にしている。
髭の生えた鼻面をひくつかせ、黒い目を見開いた生き物は、馬車から飛び降り、左手の小さなトンネルに逃げてゆく。
カイの動物語が、この生き物はヌードニックだと教えてくれる。
知性を持ち、悪戯好きなヌードニックは、ハマーダル山脈に蜂の巣状に広がる小さな割れ目に住み、ターナリンを通る馬車から物を盗む時だけトンネルに出てくるのだ。
待てよ。ということは、ここは彼らの庭なのだ。
彼らを捕まえれば、ヘルガストがトンネルの何処に潜んでいるかが分かるかもしれない……!
小さな逃亡者を追って小さな穴に飛びこみ、曲がりくねった道を20分以上進み、ついに開けた空間にでる。



驚くべき光景が俺を待ち受けていた。



松明の揺らぐ洞窟は無数のヌードニックが集う住居だったのだ。
広々としたホールの中央では、数匹のヌードニックが散らばった戦利品を選り分けている。
「侵入者ォ!」
「侵入者だォ!」
「やっつけォ!」
ヌードニックのきいきい声がこだまし、見る間にホールは騒然となった。
「人間のようじゃな。追いだすのじゃ」
命令するのは、明るい色合いの布でパッチワークされたシルクのマントを纏ったヌードニックだ。
彼が指導者らしい。こちらもカイの動物語を駆使しつつ、友好を図ってみる。
「おどかしてすまなォ。俺は侵入者ではないォ(それっぽい喋りで)」
「喋ったォ!」
「喋ったォ!人間がしゃべったォ!」
「面白いォ!」
ヌードニックたちのホールは瞬く間に混沌の渦となり、飛び跳ねるヌードニックたちで俺の周囲は埋め尽くされた。



「あなたはドゥレナーの人ですかな?どこからいらっしゃったのかね」
こう語るのは先程のリーダー、名前はガシュギスだ。
ヌードニック語を喋る人間に会うのは初めてだったらしく、俺は壇上に招かれ、丁重にもてなされた。
「俺はソマーランド人で、ハマーダルに向かっている途中なのだォ」
「おォォ!ではあなたは、先ほどトンネルに入っていった2人のブラックスクリーマーズをご存知かな?」
「ブラックスクリーマーズ……それは、どんな生き物なのだ……ォ?(語尾を忘れたォ)」
ある確信を持って訊ねる。
「肉の削げ落ちた人間の姿で、瞳は地獄の業火に燃える―― 災いを運ぶ存在じゃ」
間違いない。ヘルガストのことだ。
2時間前にヘルガストがターナリンに着き、トンネルで殺戮を行ったのだという。
「奴らがどこにいるか教えてあげようかね?」
大きく頷き、俺は壇を降りるガシュギスに続いた。

(つづく)