ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ209→→→197:ラガドーンへ:(死亡・2)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



船長の訓示がはじまると、甲板に集められた船員たちは一斉に静まり返った。
「本来なら、ここからパックス港までは3日の距離だ。だが今朝の火事で食料と水が駄目になった。よって、向きを変えてラガドーンへ向かい、食料の補給と修理を行う。修理には概ね一週間かかるだろう。以上」
一週間も停泊だと……!?
では、ソマースウォード を持ち帰る俺の任務はどうなるというのか。
この思わぬ命令変更に喜び、持ち場に戻っていく船員たちの傍らで茫然と立ち尽くす。
船長が俺の横にやってきた。
「聞いてのとおりだ。ラガドーンへはおよそ8時間、翌朝には着くと思う」


ラガドーンの名は知っていた。
無法の荒野ワイルドランドの中央に位置し、ドーン河をまたぐワイルドランド最大の港都だ。
そして同時に、盗賊結社と秘密警察のはびこる危険な街としても知られる。


「君をパックス港まで運び、ソマーランド領事館のライガー提督に引き合わせるという命令は、既に遂行が難しい。君は我々とともに修理を待つか、海岸沿いに陸路を進むか選ばねばならない」
「……選ぶ、だと?」
「そうだ」
「今更選択の余地が、この俺にあるとでもいうのかッッ!!!」
思わず浴びせた怒声に、数人の船員が驚いて振り向く。
気づけば、俺の手は金色の刺繍が施された制服の襟にかかっていた。
胸倉を掴まれた船長からはどんな表情も読み取れない。
分かってはいる。
俺が怒ったところで、船上では全員の命を預かる船長の権限が絶対だ。
そしておそらく、ケルマン船長はどんな事情があろうと、船員を守るための決断を下すだろう。
陸を離れた孤狼は無力だ。
「いずれにせよ、選択するのは君自身だ」
「……明朝、ラガドーンで船を下りる」
カイ・マントを翻して背を向け、自らの船室へ戻っていく。



これが船長との最後の会話になろうとは、この時、俺は想像さえしていなかった。
(つづく)