選択肢のみのゲーム性がもたらす長所・短所


そろそろネタバレが増えます。ご注意を。
『ヘルメス夢幻』同様、物語の舞台は小気味よく移りかわり、各シーンにおける自由度の高さはゲームを満喫させてくれます。
歩兵戦から余りもののMSを駆っての苛烈なキエフ撤退戦、そしてアイスランドへ向かう車中でのシーン、さらにモビルスーツ数機を任されての連携戦闘。
エニグマ始動』のパラグラフが217ということを考えれば、これはおそるべき構成力です。*1
逆に言えば、これは不要な選択肢を極力省いてストーリーに力を注いでいることのあらわれです。
なので、驚くなかれ、このゲームブックには最長14ページ半ものパラグラフまで存在します*2
前作でも12ページ近くを1パラグラフにおさめて物語の進行に費やすシーンがありましたがそれ以上。
おそらくゲームブック史上もっとも長いパラグラフじゃないでしょうか。
むろん一行の文字数が少なめ(24文字)なのもページ数が増える理由なのですが、それ以上に拓唯先生がいかに『物語る』ことに執着していたか如実に分かるかと思います。


しかし同時に、選択肢のみによるゲーム性は限界もみせています。
それが、3作目にしてあらわれる一発死の多さ。
上記の通りモビルスーツでの戦闘は困難な局面ばかりで、そのため、難易度が跳ね上がっているのです。
これがサイコロを使って体力や機動ポイントの上下で勝敗を決めるタイプのゲームブックなら、間違った選択肢のペナルティはポイントの減少で事足りるのですが、選択肢のみの場合、どうしても一発死が増えてしまうのです。
特にキエフ撤退戦のシーンでは、旧式のゲルググか長距離火器のないドライセンのどちらかを操り、ザクⅢ・ドダイ改に乗ったバウ・ジムⅢ・さらにはZ2ガンダムと、周囲から押し迫ってくる敵機相手に連戦を強いられるのです。
それこそ3つある選択肢のうち2つが即死、などというシーンが何箇所もあらわれますし、今作では言及こそされませんが『死のパラグラフ』もしっかり存在しています(それも序盤に)。
難易度のとてつもない高さ……これが、3作目の大きなマイナス要因です。
適度な難しさなら最初からやり直す気にもなりますが、一発死が連続するとしだいに読者も物語を読むのが面倒になり、ズルをしがちになります。
選択肢を選んでいく楽しみが逆に苦痛になるわけです。
この辺、バランス調整が難しかったのでしょうが、もう少し甘くできていたらと思わされます。

*1:ちなみに、シリーズ通してもパラグラフ数の平均は210ちょっと。

*2:パラグラフ202。ティターンズに迎え入れられた主人公がクーデターの尖兵としてモビルスーツで出撃するまでのシーン