絡み合うキャラクターたち


この先、ネタバレばかりです。ご注意下さい。
それが嫌だという子は読むのをおやめなさい!そしてどこまでも羽ばたいてお行きなさい!
羽ばたいてしまうときりがないので諸注意はこの辺で。
ともかくこの先はストーリーに関するただの蛇足でありますので。






警告しましたからね?



一方のストーリーはさすが完結編、キャラクターの思惑がそれぞれ交錯し、愛憎いりみだれる駆け引きの連続です。
ミディ・ホーソンによって仕掛けられた精神操作から最愛のナオミを解き放つため、憎しみを押さえ込んでミディの言いなりになる主人公。
彼を手駒のように扱いつつもいつしか特別な感情を抱きはじめていくミディ。
さらにキエフから脱出した二人を迎え入れるティターンズ側の司令官は、かつて主人公の属するFISTに失脚させられた仇敵であり、彼が狙うクーデターの目的は主人公の古巣、連邦情報部の占拠だった……もうドロドロの展開です。
なかでも、読み所は主人公とミディの距離感でしょう。
2巻での初登場時から強引な手段で主人公を手に入れようとしたミディ。
立ちまわりや所作の幼さと、うらはらの傲慢さ。
それでいて、時に無邪気な内心をのぞかせる彼女に、主人公も揺らぎ、またミディ自身も揺れていきます。


キエフ脱出直後のシーンで)

 ミディは唇をかんだまま視線を虚空に泳がせていた。ややあって口を開く。
「そんなにキーワードを知りたい?」
「当たり前だろ! ナオミが」
「あんな人のことどうでもいいじゃない!」
 二の腕をつかんだ腕を振り払い、ミディは体ごときみに向きなおった。

(中略)

 ミディのことばに心を動かされなかったと言えば嘘になる。ザザダーンで
初めて会ったときもそうだったがあの少女には不思議な魅力があった。小さな
体に誇大妄想的な野望を詰めこんだアンバランスさが見ている者に放っては
おけないという感情をいだかせる。



ティターンズへ向かうことを了承した主人公に対して)

「でも……」
「心配してくれてるのかな? 俺を」
「あなたの力を失いたくないだけよ」
 きみのことばにミディは一瞬動揺し、それを隠すかのようにむきになって
言い返してきた。自分のつま先のあたりに視線を落として黙りこむ。


いくつもの局面を経て、互いの思惑を抱えつつ近づいていく主人公とミディ。
しかし、物語はその二人を安直に放ってはおきません。
ブリテン島のエウーゴ13師団に配属された、最強のエースが乗るZZガンダム通称“黒太子”をエニグマ*1の力で辛くも撃破した主人公はシステムの内側に自我を埋もれさせ、殺戮機械と化してしまうのです。
主人公を救うためミディが取った最後の手段――それは実験で搭乗者を精神崩壊させた、エニグマ以上の性能を持つシュペールサイコミュを搭載したクインテットキュベレイに乗り込み、彼を守ることだった。
ミディの悲痛な叫びにより自分を取り戻した主人公、しかしその眼前で、ミディはシステムに取り込まれ、五機のキュベレイが敵味方の区別なく暴走を始めてしまう。


真のラスボスは半端ない強さで主人公に迫ってきます。
これを倒し、物語を終局に導くのは読者自身にしかできないことなのです……

*1:グルンドゥールに搭載されたシュペールサイコミュ