ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ100→→→パラグラフ70:太陽神光臨:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


戦士の威厳と賢者の思慮に満ちた巨大な顔が、まばゆい光で狼を癒す。
金色の両眼が炯々と輝き俺を見下ろしていた。
慈悲深い微笑は、英雄的な特徴を柔らかなものとし、とどろく声は深く響きを帯びている。
「余が何者であるか、そなたには分かるか?」
マグナカイの感覚が告げている。
その場で跪き、即答する。


「偉大なる我が主……ソマーランドの守護神、太陽神カイよ」


「我が子よ。最後のカイ・マスターよ」
太陽神カイ。
この神こそは、ソマーランドの、カイ・マスターの信仰の源泉たる存在なのだ。
すべての始原が、滔々と俺に語りかけてくる。


「この暗闇の時代、そなたはマグナカイの探索を成し遂げるために生まれたのだ。探索に身を捧げよ。それにより、故国を救い、世界を破滅させんと脅かす不均衡を正すことができる。大いなる結果が生み出されよう。己が目的と力を疑ってはならぬ。そなたの裡には、いかなる時でも未来の戦士に希望の火を灯す炎が燃えているのだ」


神聖なる輝きと言葉のもたらす引力が心をみたす。
まさにこの瞬間、このタイミングだからこそ。
もっとも神の世界に近い、至高の精神の領域にいたからこそ、太陽神カイは俺の元に来てくれたのだろう。
突然神の姿が粉々にはじけ、光の粒子となった。
息を呑む間もなく、俺は渦巻くぶあつい雲めがけてまっさかさまに落下していく。
何者かの攻撃かと思い、恐怖を覚えるが、すぐさま見えざる守護神のコントロールを感じ取った。
夢から覚めるかのように雲は薄れていく。
気づいたとき、確固たる大地の喜ばしい感触が足の下に戻っていた。
『無の領域』を踏破したのだ。
……見上げる頭上。
黄昏界の灰色の空を背景に、天をもうがつ巨大な絶壁がそこに。




 ……(中略)……断崖の最上部には城塞都市が
鎮座していて、過酷な概観と竜の城門に思いだす
――ここが、忘れられたサンダイの都市、ハアガ
ダールだ。
 ……(中略)……城門まで登っていくのはほと
んど不可能……(中略)……悪臭を放つ流れが
ある。都市へつづく汚水溝に違いない。

  汚水溝を通じて都市に入ろうと思うなら、140へ。
  都市の城門につづく、切り立ったふきさらしの崖を登ろうと思うなら、244へ。


ついにたどりついた。ダジャーン側の『影の門』。そして、最終決戦の地。
期せずしてリプレイも666回目。獣の数字にふさわしい、実に不吉で陰惨たる都市の全容だった。
緋色の戦士がロアストーンを奪っていった因縁の地だ。
オーコールの村での予言も思いだす。


『あなたは、はるか彼方の、竜が息を吐く城へと向かうのかね?』
「ああ」
『この城には蛇がいるだろう。致命的な毒をもっていることに注意なさい』
「……」

『毒蛇の一噛みで―― あなたは死ぬ』


いまや、狼は毒蛇の意味に心当たりがあった。
暗いカイ・マスターの原動力、復讐心が軋みをあげて動きだす。


というかですね。
『城門まで登っていくのは不可能』なはずなのに、選択肢には岸壁をフリークライミングする選択肢が堂々とある。
このあたりがフリーダムすぎるマグナマンドの面白さだ。
どう考えたってヤバすぎる。
錆びた鉄柵を蹴り壊し、円形のダストシュートから水路の脇を走る歩道へ這い上がる。
輝く苔がまだらに生えており、薄気味悪い緑の薄明かりが通路をぼんやりと照らす。
階段と上り坂の連続が、来訪者を直上の都市へといざなう。
お馴染みのパターンだ。
ともあれ、素直に下水道に侵入した……そして、やはり、素直な脅威と遭遇する。
下水道を点々と移って本流が注ぎこむ踊り場にたどりついたとき、石畳をこする音が聞こえてくる。



なにか餓えたものがトンネルにそってこちらに進んでくると感覚が告げる。


  動物コントロールを身につけていれば、3へ。
  動物コントロールを身につけていなければ、168へ。


「あー、なにコレ。強制じゃん」
思わず嘆息していた。
11巻まで踏破した狼にとっては実質一本道。強制的に動物コントロールを身につけている選択肢へ飛ぶ。
そして当然のようにマグナカイの力で人喰い両生類を掌握。
巣に帰るよう命令を下し、さらに俺の匂いを嗅ぎわけられないよう嗅覚をずらしてやる。
なんの危険もなく下水道を突破。
階段と梯子を何度も上りつめ、無数の下水道をカイの教えに導かれて進んでいく。
天井に並ぶ蝶番の一つをこじ開けると、そこはすでに都市の内部。薄暗い裏通りだった。
よじのぼり、ハアガダールへの潜入を果たす。
ハアガダールの暗い並木道を歩いているのはごくわずかな者たちだった。
大気は塩と硫黄の匂いでみたされており、行きかう者の多くが悪臭防止のマスクをつけている。
マントを深くかぶった俺の姿も完全に溶け込んでいるようだ。


ぼんやり照らされた通りは、ハアガダールの中央広場で終わった。
……ここが、終着点だ。
にわかにカイ戦士の血が沸騰する。
見えた光景に冒険者の勘が警告を鳴らす。クライマックスは、ラストバトルは目前だ。


通過パラグラフ:(100)→51→140→3→70  治癒術の効果:4点   現在の体力点:40点(全快)
(つづく)