ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

残忍な造りの牛追いムチだ

【パラグラフ185→→→パラグラフ118:叛逆のレジスタンス:(死亡・14)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



思わず背中のナップザックに目がいく。
忘れるはずもない。先ほど強奪したばかりの牛追い鞭 が吊り下がっている。
しかし、何故、いまさら……?
前世ではセブ・ジャレルその人とも旅を共にしたし、レジスタンスの幕営にまで踏み込んでいるのに。
今頃になって、この局面で、牛追い鞭 が俺の探索を妨害するのか……ッ!
といってズル業を発案し、この場でこっそり捨てることはできない。
理由は簡単。狼の本能が拒絶するからだ。
少なくとも、このローン・ウルフの行動原理は極めて単純。『強欲』の一文字に尽きる。
糞がッ!!
冒険中手に入れたアイテムはなッ!
理由の如何を問わず、死んでも自分から捨てたりしないんだよッ!
俺はアイテム一つ一つのために鉄火場に命を張ってきている。
今さらジャイアニズムを捨て聖人君子など気取れるかッッ!!
隠すこともなく堂々と近づく。
俺の腰に目を留めた一人の顔色が変わった。
そいつからの耳打ちを受け、先ほど声をかけてきた軍曹が油断なく近づいてくる。
「その腰の鞭……それほど素晴らしい代物には滅多にお目にかかれない。もっと良く見せてもらえないか、斥候兵」
気づけば、レジスタンスの陣形が包囲のそれに変わっていた。



  予知を身につけていて、使いたいのなら、302へ。
  軍曹に牛追い鞭 を見せるのなら、159へ。
  軍曹に調べさせることを拒否するか、198へ。


「はっ」
「……何がおかしい?」
選択肢の浅さに思わず鼻で笑う。
何とまあお優しい展開か。
予知のパラグラフを見るまでもなく冒険者の勘が全身で叫びたてる。
状況―― 完全なクロ。
もはやレジスタンスとの和解の道など存在しないのだと。
そして、そうであるなら選択肢もまた然り。
何人レジスタンスを口封じすることになったとしても、この牛追い鞭 だけは死守するッ!
「とにかく見せてくれ、斥候兵」
だが断る


「はっ!」
 非難するように軍曹は唾を吐きすてた。
「思ったとおりだ。そいつはハルガーの鞭だな――そういう形の鞭はまずないからな。
どうやらハルガーは快く手放したわけじゃないらしい。違うか、斥候兵?」
 これを耳にした他のレジスタンスが腰の剣に手を伸ばす。君は、彼らの目にまぎれもない
殺意の輝きをとらえる。


謂れもなく苛々がこみあげる。
こいつらどこまで性根が捻じ曲がってやがる……最初に襲ってきたのはハルガーの方だろうが……
畜生、これでさらに探索の旅が困難になるんだろうよ……
「そうでもないぜ、軍曹。ハルガーは快く牛追い鞭 を譲ってくれたよ」
「何?」
さながら春の陽だまりを思わせる朗らかな声音で、俺は軍曹に語りかけた。
「助けてくれェェ……!後生だから、鞭でも何でもくれてやるから、こ、殺さないでくれェ……ってね」
憎々しげに犬歯を剥きだし、ゆるゆるとソマースウォード を抜き放つ。
「そうとも。屠殺される豚のように縋りついて俺に譲ってくれたさ。数分後のお前らと同じだ」
「こッ……このケダモノ野郎を殺せ!殺せェェェ!!」
一斉に繰り出された20本分の長剣を、上体の体捌きのみでかわす。
「ひゃはあッ」
嘲笑とともに一瞬で真上に跳躍。
軽く払った一閃が軍曹の顔に真新しい傷を残し、激昂したレジスタンスが人馬もろとも殺到してきた。



 レジスタンスの騎兵たち  戦闘力点28  体力点32


 動物コントロールを身につけていれば、戦いの間中、戦闘力点に2点を
加えることができる。


(つづく)