ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ231→→→パラグラフ144:いい旅夢気分・地獄の沼沢地編:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



大水峡テンタリアスまで至るヘルスワンプへは、周囲一帯の無数の河川が流れ込んでくる。
ダナーグと違い、大小無数の河川が複雑に枝分かれ織り成された迷水路。
ダークランド、ニボズ奴隷国、不毛なるガタン、etcetc。
そうした河川が溜まり、淀み、ゆっくりと、本来の生育を妨げられた生物の姿を捻じ曲げていく。
ヘルスワンプは絶えず変容しつづける新たな怪異の苗床なのだ。
必然、この危険地帯のど真ん中に二人でボートを漕ぎだす事態が常識外であり……


「平和だねェ〜」
「ああ」
――いたって順調、かつ長閑な一日目を俺たちは迎えていた。


力任せに漕がずとも、強い流れが着実に北方ヘルスワンプ中央部へ向けてボートを運ぶ。
未知の敵も怪物との第一種遭遇もなく、暖かい陽射しと会話を楽しみ、ジャレルは満足している。
ソマーランドとエル公国。
馴染みの薄い互いの話は好奇心をかきたて、エルの伝説について多くを学んだお礼にソマーランドでの冒険をジャレルに語り聞かせる。
一日目の終わり、東から別な河川が流れ込んできた。
不規則かつ流れの速いこの合流点でも、ジャレルは動じる素振りもなく船を西岸の岸辺に寄せていく。
泥だらけの岸辺にボートを引きずりあげて俺は尋ねた。
「今夜はここで野宿か?」
「いや。密輸業者の小屋が残っているはずだが、うむ、無事なようでなによ……」
ジャレルが不自然に言葉を区切る。
岸辺の、背の高い草の暗がりから、どこか豚を思わせる真円の緑の眼がギラリと輝く。
尾まで入れれば3メートルはあろうか。巨大な爬虫類が、鱗を逆立て、暗い隠れ家から一気に這いずりだしたのだ。
「動くなよ……死にたくなければ、だ」
ジャレルの声はしわがれていた。
「あれはゴロドン。テイントールオオカミなど赤子のようなもの、あいつは極めつけの怪物だ」


「ムゥーン」


そして俺は全力で鼻をほじっていた。
「お、おい何をしている!ローン・ウルフ卿、蛮勇はよせとあれほど!」
「任せておけ」
喉奥から低い警告の唸りを上げ、退けと命じる。
動物コントロールを修め、さらにプライメイトを超えた俺の能力に死角はない。
所詮は単純な生物故か、不満そうに長い角を振り、爬虫類は身を翻した。
呆然としているジャレルに笑いかける。
「とっとと小屋で休もうぜ。ところで、あの怪物、どのくらいの強さなの?」
戦闘力点29点、体力点36点 程度だな。強敵だぞ」
今度震え出すのは俺の番だった。持っててよかった動物コントロール
石の小屋で一晩過ごす。
快適とはいいがたいが、夜半からの雨をしのぐことができ、体力点のロスは防げた。
翌朝、篠つく雨の中へと漕ぎ出していく。


 なにごともなく鈍い灰色の時間が流れすぎ、鬱蒼と木の茂る両岸が、しだいに
軟泥の干潟とねじくれ石化した木々のならぶ荒野に変わっていく。
 ここは流れも弱く、泡で斑になった茶色の川面を進むため舟を漕がざるを得ない。
 ジャレルは舳先に座り、寒い雨が入らないよう外套を肩のまわりにきっちり引きつけ
ていた。邪悪の気配がただよう沼沢地を横切って幅の狭い水路を抜けていくあいだ、
身動きもせず、じっと前方を見つめている。


暗鬱たる光景は、むしろこちらが本来のヘルスワンプなのだと理解させるに十分だった。
やはり闇の国土が近いせいなのだろう。
石化した樹林は、北方のこの領域以北、ダークランドの内地でしかお目にかかれないと聞く。
どのような猛毒が含まれているのか、水の色は薄気味悪く淀み、濁っている。
時折、川辺の林や水面深くを得体の知れぬ影がよぎる。
ジャレルほどのガイドでも完全に把握しきれていないのか、二度ほど袋小路の水路に迷いこんだ。
緊張に意識を擦り減らした船旅の二日目、ようやく黄昏が近づく。




「乱数表」を指せ。


  0から4なら、59へ。
  5から9なら、259へ。



通過パラグラフ:(231)→240→112→144  治癒術の効果:+3点   現在の体力点:17点
(つづく)