ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

ザーリクスの廃墟だ

【パラグラフ175→→→パラグラフ87:食屍鬼の呪詛:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



数時間にもおよぶ登攀の疲労さえ、この光景の前では忘れられ、四肢に瑞々しい活力が沸いてくる。
眼下に広がる城址は、その名を謳われた世界最古の美都。
堂々たる古代の街区と建造物が地底の裂け目に横たわり、あまりの広大さゆえ、闇に溶け込んでなお遥かに広がっている。
ピラミッド形の寺院や塔の数々はいずれもタホウを思わせた。
彫刻の刻まれた壁も壊れ、砕けて、不自然な角度で傾いたまま、数百年にわたって地底に沈んでいたのだ。
―― これこそが古代都市ザーリクスだった。
『あまねく龍のなかで最も偉大なる』ナイゼーターによって創世された龍族の故郷なのだ。
彼の種族を終焉に導いた混沌の時代……
地獄の王アガラシュによる壊滅的な地殻変動を生き延びた唯一の都市が、俺の足元から一直線に伸びていた。
興奮に震えつつ一歩を踏みだす。
城址の入口には牙を剥く2体の龍の巨石像が佇み、左右の高みから威圧的な眼差しで俺を歓迎した。
龍たちに見守られつつ、食事のため休みをとった俺は、都の中枢へと大路を下っていく。
まさにその時、左手の廃墟のなかを、何か人影のようなものが闇にまぎれて動くのが見えた。
奇妙な違和感を覚えて立ち止まり―― 少なからず緊張を強いられる。



・精神の伝授のサークルを修めていれば、281へ。
・精神の伝授のサークルを修めていなければ、この影を調べてもよい。122へ。
・または、影を無視して通りを進んでもよい。61へ。


精神の伝授のサークル ……
この時点で、重篤な危機の可能性を嗅ぎとった。
マグナマンド世界で最も恐れるべきは生身の武力ではない。
冷たい鋼の通用しない超常の敵なのだ。
それを知っていればこそ、カイの始祖たちは精神の教えを徹底的に追及し、マグナカイの体系を生みだした。
マグナカイの教えが精神系に偏っているのもむべなるかな。
常人離れした体術で殺せない敵、それは最悪の脅威なのだ。
影の正体が何なのか、精神のサークルを修めていない俺には判断できない。
問題は一つ。
この俺が、近づくか逃げるか、どちらを選ぶかだ。
逃げられるなら逃げたほうが良い。だが、不可避の敵であるなら、背を向けることは致命的な結果をもたらすだろう。
あとは体力点との相談だった。
現状は17点、逃げるにしてもこの点数を一気に奪われることはないと計算する。
影を無視して通りを歩きだす。


ほんの数歩も進まぬうち、物凄い苦痛が君の心を貫く。
渦巻く一群の霧が体を飲みこみ、麻痺させんばかりの支配力に握り潰されそうになる。
念バリアを身につけていて、かつチュータリーの階級に達していなければ、体力点を3点
失う。
ひどい痛みに歯ぎしりをし、襲撃者が君を殴り倒そうとこっちに走ってきたとき、くるりと
反転して敵と向きあう。


極限まで高められた念バリアがぎりぎりのところで敵の奇襲を防いだ。
精神攻撃を跳ね返し、バシュナのナイフ に俺の殺意を乗り移らせ、漆黒の刀身に蒼い焔が奔る。
間近に敵を引きつけたとき、身の毛のよだつ特徴があらわになった。
敵の外見は地底湖の亡者に似通っていたが、更に人間らしさを欠いていた。
頭蓋は奇妙に膨れ上がり、その代り胴体は細長く萎びており、成長不良の植物を思わせた。
粘液質の黒い毒液が、どこか嘲るような口元と腫れあがった舌から滴り落ちていた。
人間の倍は長い両腕に絡みつく霧の渦―― それ自体に知性があるのだ!―― を回避し、攻撃に転じた。



サイ・グール  戦闘力点20  体力点30
ソマースウォード があれば、不死者に与えるダメージは通常の2倍となる。


あえて敵の懐に飛び込み、接近戦に持ち込んだことで勝機が生まれたらしい。
敵が呪詛を放つ前にナイフの一閃で集中を破り、ひたすら攻めていく。
戦闘比は+5。
カイの基本的な教えである念撃が効くということから見ても、念バリアのような防御技は持っていないのだろう。
開幕で「7」を叩きだし、ごっそり体力の1/3―― 文字通り全身の1/3を破壊する。
つづく2回戦はファンブル連打で7点のダメージを負うが、臆せず攻め続け「9」で止めを刺した。
いまだ己が不運に対する不安は残っているものの、どうやら乱数運も上向きだしたようだ。
物理的に肉体を破壊され、遂に動かなくなった忌まわしい敵を見下ろしたとき、その右手に目がいく。
頭が真っ白になった。


―― 食屍鬼の右手には、燃えあがり揺らめく宝玉の指輪が嵌っていた ――



通過パラグラフ:(175)→61→301(戦闘)→87  治癒術の効果:+2点   現在の体力点:10点
(つづく)