ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

いくではござりませぬ

【パラグラフ148→→→パラグラフ66:魔人狼覚醒:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



土埃を蹴立てて、熟練のジャーク騎乗兵がドゥームオオカミを駆り、殺到する。
円陣に囲まれては逃げ場はない。
ハメられたことを知り、ぬるりと冷汗が滴った。
最初の2ターンは戦闘比−17に達し、念波動すら焼け石に水だ。
……ならば、狼は本能の全てを生存に傾け、ドーピング+ゲームブック業で生き残るのみ!!
とはいえ、啖呵を切っただけでは死亡フラグは覆らない。
残された手札は念撃(戦闘力+2)あるいは念波動(+4)、そしてアレサーの実(+2) 濃縮アレサー(+4)
戦闘力を底上げしうる素材を吟味する。
ここではアレサーの実 など論外だ。たかが2点、何の足しにもならない。
ならば、腹を括るほかあるまい。遂にこの時が来たのだ。
至高にして究極……
8巻分に及ぶ冒険を通してただ一本しか入手できなかった超高純度のハッパ……
戦闘力点に4点を加えられる濃縮アレサー を、血を吐く思いで躊躇なくキメる。
ハッパの力とその反作用は見る間に狼の精神に作用し始める。



――カイ修道院にてハッパが紛失した場合
最初に疑われるべきは外部の者ではない――


「た……種エェェェェェ!!!」
久方ぶりに味わう、異様なるドーピングの疾走感の波。
四肢の血流が滾り、抑えきれないほど力が漲る狂戦士の常備薬……それが全身の筋肉をビルドアップしていく。
濃縮アレサー の効果は通常のアレサーを遥かに凌駕し、バトルジャンキーに相応しい戦闘機械へと変造するのだ。
猫科動物のごとく狼の瞳孔が拡大していく。
しかも、これは単なる前段に過ぎない。
30点以上の体力点の差を埋めるために、先ほど喰らった12点のダメージも今ここで回復させる。
正気にて大業はならず。
濃縮アレサー ごときで狼のドーピングが終わるはずもない。
回復薬も併用して淡雪のごとく疲労を溶かし、瞬時にカイ・マスターのテンションを最上の状態へ引き上げるのだ。
猫科動物のごとき異な掴みをもって、更なる至福の2本を放り投げ、旋転して宙で飲み下す。
どれだけ血を失おうとも、四肢を高速で駆動させる薬を……
ラウンスパーの薬+レンダリムの万能薬 、この混合剤を全神経に染み渡らせて一気に体力10点を取り戻すッ!




ローン・ウルフ
戦闘力23+2(念撃)+4(濃縮アレサー)  
体力点31

VS
  戦闘比−9 
.

 6人のドゥームオオカミ乗り
戦闘力38
体力点56



だが、足りない・・・
まだ手が届かない。これでは勝てない。勝機の片鱗さえない。
戦闘比−9では敵のワンターンキルさえ防げず、しかも最初の2回戦は更に2点低くなる。圧倒的に足りぬのだ・・・。
通常のアレサーの実はおろか、濃縮アレサーでさえ、なお、俺を死地からは救いだしようがない。
更に、ダメージが12点というのも痛かった。
ラウンスパーはもう一本残っているが、ここで使うと2点、回復量を損することになるのだ。
「勝てぬ……のか……」
血を吐いて倒れかけたその時。
閃くものがあった。


そもそも、何故「どちらのアレサーを使うべきか」などと悩んでいたのだろう……!?
慌ただしく記憶を手繰り返す。

 
123. 
一つかみ分のアレサーの実の値段は金貨3枚だった。 
戦う前にこれを食べれば戦闘力点が二点増え…… 
……(中略)…… 
また戦闘の際には一度に 一 つ か み 分の アレサーの実しか食べられない。 
 


当時は読み流し、その当たり前さにリプレイにさえ記入していなかった6巻パラグラフ123のこの記述に騙されていた。
こうしてしっかり書かれているではないか。
重ねがけしてはいけないのは アレサーの 『実』 のみ。
アレサーの『薬』を重ね飲みできない……などという規定は、全8巻中、どこにも表記されていない……!
そういうことだったのか。
ついに、この俺はカイ戦闘術の秘奥に独力で辿り着いた。
アレサーの実とアレサーの薬は重ねがけができるのだッ!



而して・・・
もし勝たんと欲すればまずキメるべし・・・


窮地に追い込まれた俺もまた、さらなる進化を遂げていく。
獲物に襲い掛かる蛇のごとくナップザックに手を疾らせ、残されたアレサーの実 を掴みだす。
ほんの一瞬……
走馬灯の如く、修行時代の記憶が溢れた。
禁断の技―― カイの師でさえ沈黙のうちに禁じていた奥義がここに開眼する。
ハッパの重ねがけ……
一つでさえ重大な負荷をかけるこのドーピングを二つ重ねれば、常人はただ心身ともに破壊され滅びるばかり。
かくも狂おしい荒行を可能にするのは、ただ、カイ・マスターの野獣の肉体のみ。
この死地を脱するには、もはやこれしかないッッ!!


カイ・マスターを死地に追いこんだジャークらにとって、ただ一つの誤算は――
残照のなか、もはやカイの孤狼が正気でも曖昧でもなく――
敵であろうと味方であろうと――
間合に入ったもの全てを斬る――魔人へと変貌をとげたこと――


言葉の意味は良くわからないが兎に角勢いだけは圧倒的なマッドアナウンサーの注釈とともに、俺の手元に再び力が漲っていく。
もはやこの身は戦場の修羅。
狼の臓腑は、既に過剰な薬物摂取によって沸騰せんばかり。
そこへ……
最後のハッパを一滴残らずキメたとたん、視界が眩み理性が絶えていく。
「ぬふゥゥゥ」
熱を帯びた獣臭が水煙となって口腔から溢れ、怒髪天をつき双肩悉く軋みをあげ、肉の興りを昂ぶらせていく・・・ッ!



魔人ローン・ウルフ



6人のドゥームオオカミ乗り


 VS


戦闘力23+2(念撃)
+4+2(重ねがけ)

 戦闘比−7

戦闘力38


依然として、圧倒的危地に立たされていることには変わりがない。
だが。
僅かながら、0パーセントからほんの数メモリ分、生還へ向けて針が振れていく。
勝てる。
殺し尽くすと狂信するのだ・・・
己が怯懦を殺せずして敵を殺すことなど出来はしない・・・
獣の咆哮が迫っていた。
ジャークの剣が唸り、ヘルジェダドの生み出した狩猟獣のまがいものが総身を撓め襲いかかる。
地獄から這い上がった狼の咆哮を以て応え、俺も同時に地を蹴って跳躍する。
あとは『覚悟』だけが道を切り拓くッ!!



最初の2回戦、戦闘比−9にも達する絶望の宴が、ここに幕を開けようとしている――



通過パラグラフ:244(戦闘)→148(戦闘) 治癒術の効果:0点   現在の体力点:21点

(つづく)