ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

ガッキー

【パラグラフ205→→→パラグラフ53:奈落の底へ:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



るつぼの中心に下がったゴンドラから真下を見下ろす。
遥かなシャフトの底から、湿った冷風に乗り、胸のつかえるような腐臭が甲高い音とともに噴き上げてきた。
手を振って下降するよう合図を送る。
酷い動悸がおさまらず、チバンの台詞を繰り返し反芻していた。
戦士は大抵預言を信じない―― 良かれ悪しかれ、預言の類は覚悟を鈍らせるからだ。
だが。
「この先、お前に友として近づく者がいるだろう。これを信じてはならぬ」


――裏切りが彼の心臓に息づいている――


 
 降下し始めて最初の数分の間は、赤い石壁が吊り籠を取り囲んでいるのが見えていた。 
それから、ぎざぎざの岩の縁が縦抗の終わりを告げると同時に、君は完全な闇のなかに飲まれ 
ていく。 
 壁も床も何処ににあるかさえ分からず、今では縦抗が遥か上方の暗闇に覗く灰色の小さな 
丸い光源でしかない。 
 



・ 予 知 を身につけていれば、251へ。
・ 予 知 を身につけていなければ、53へ。


酷く嫌な予感がした。
半分はゲームブッカーとしての本能。
もう半分は作者の裏の意図を勘ぐる発想からだ。
仮に「ハッパ隠者(仮称)」の預言を成就させるなら、このタイミングがベストなのだ。
ザーリクスに降りてしまってからでは余人の手は及ばない。
だが、今なら……
不安に耐えかね、我慢できずにゲームブック業を使うと決める。
何、大丈夫。ほんの少しマグナカイの教えの先を覗いて、すぐ戻ってくるだけだ。
大丈夫だとも……恐らく……多分……


「秘 奥 義 ・ 指 は さ み ノ ゾ キ!!」

 
  パラグラフ.251 

 冥府の深みへと下っていくことで視力を奪われた代わりに、カイの感覚が遥かに鋭敏に、 
遥かに研ぎ澄まされていく。 
 心の中に『るつぼ』のまわりで行われている出来事のイメージが思い浮かんだ。 
 ウインチと、君の籠を支えるロープを供給している評議会の護衛兵の顔が見えてきた。 
新たな1人がそこに加わり、彼らの仕事を手伝い始める。 
 男は縦抗の縁でロープを掴んでいた。 
 だが、その手に隠されているのは氷のような刃だ!! 
 含み笑いをする男―― チル議員の上辺だけの笑みが脳裏に浮かび、恐怖で呼吸が止まった。 


 53へ。 
 


「なぁァァンだってぇェェェ!!!」
絶句する。
やはりそうだった……やはり、奴が裏切り者だった……
しかも、このパラグラフの選択肢。
予知を『身につけていようが、身につけてなかろうが』、関係ないのだ。
落ちていく先はただ一つ……
ロープが蛇のように胴震いし、本能的に縁を掴むと、吊り籠は乱暴に片側へ放りだされた。
握りしめた拳が白くなり、冷や汗が額を伝っていく。
吊り籠は大きく弧をえがいて揺れ、激しく捻じれだす。
弾ける音が―― 何がって? 切断されたロープのだ、バカめ!―― 頭上で谺した瞬間、暗黒の虚空へと投げだされた。


くたばりやがれ(Go to hell、チル―――――― ッッ!!!」


闇の中で裏切り者を罵った俺は、今や自重を支えうる手がかりを何一つ持たず・・・
円筒の底へと自由落下を始めていく・・・・・・ッ!


通過パラグラフ:(205)→226 →53  治癒術の効果:+2点   現在の体力点:26点

(つづく)