ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ63→→→パラグラフ268:蔓延る腐敗と隠された真実:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



シダラを後にしてからは特に何もおきず、故国ソマーランドの近況をバネドンと語りあいながら街道を進む。
ロアストーン探索のためカイ修道院を発ってから、既に3年が経っているのだ。
雑談の合間に時間が過ぎていく。


日没から1時間後、夜が黒い外套を四囲に投げかけたころ、街道の先に揺れるランプの灯が見えてきた―― シャディの村だ。
一際目立つ赤々とした炎は村の居酒屋ギューク亭の明かりだった。
旅の疲労が骨身に堪えているだけにこの温もりに誘われる。
白馬を繋ぎ、憩いを求めてやってくる村人に混じって居酒屋に入っていく。
村の農民で溢れかえっているにもかかわらず、気味の悪い静寂が酒場を覆っていた。
人々は陰気に黙りこくり、原産地の名を冠したスロビアのライ麦酒、ロブカに目を落とすばかりだ。
もしや罠でも、と注意して本文を拾うが、そうした気配はない。
戦争の噂が影でも落としているのだろう。
……そういえば、このライ麦酒の原産地も数日前、ナーグに蹂躙されたばかりなのだ。
「いらっしゃい、旅の方々」
居酒屋の主人ギュークは禿頭を神経質そうに頷かせ、俺たちを迎え入れた。
アナーリの居酒屋にはカウンターの類がなく、客は長い宴会用のテーブルについて注文を待つようだ。
此方の顔を窺いつつ、宿代は12ルーンだと主人が告げる。



・部屋の代金を払えるだけの金(12ルーンは金貨4枚に等しい)を持っているなら、34へ。
・宿泊費を払えるだけのルーンまたは金貨を持っていないなら、132へ。


「…… 金貨3枚 の間違いだろ」
軽くツッコミ。
誤訳ではなく、原文でもこの通りにある上、エラッタも付いていない。
遊んでいればすぐ解るミスだろうに……
何にせよ金貨1枚=4ルーンなので、宿代は金貨3枚。妥当な値段だ。
金を支払ってそれぞれ部屋の鍵を預かり、主人からのサービスでロブカを一杯ご馳走になる。
強い蒸留酒を喉に流しこみ、体が芯から温まってくる。
周囲を見渡し、どうするか考えた―― 選択肢は3つほどだ。
テーブルの端では何か博打らしき事をしている連中がいる。
不思議なことに金ではなく物々交換のようだ。
主人のギュークはちょうど手が空いたらしく傍らに立っている。
店の奥からは香ばしい夕餉の匂いが食欲をそそる。
まずは順に、早く済みそうなところから進めていこう。適当な話題をギュークに振ってみる。
「ひどいものだよ旅の方。アナーリはすっかりおかしくなっちまったんだ」
顔をひくつかせながらギュークが語りだす。
どうも彼は心配性らしく、絶えず神経質にそわそわしている。心配の種は概ね戦争の話題だ。
アナーリを統治する評議会は真実を隠している、何も問題ないと繰り返すばかりだ、そう糾弾する。
不安そうに太い手を握りしめ、彼は続けた。
「そうとも、私は馬鹿じゃない。黙って成り行きに従う気はないね。来週にはこの居酒屋も閉じて、村から出ていくさ。旅の方々に助言できるとすれば、そう、私と同じようにするのが賢いだろうね」
ロブカのお代わりを求める声が聞こえ、ギュークは話を打ち切って客の下へ小走りに行ってしまう。
微かに、バネドンが不安な顔を見せていた。
評議会が戦争の事実を隠蔽しているというのは、俺たちの探索にとっても良い話では無いだろう。
この国の権力者たちがタホウのロアストーン 抵抗勢力とならないことを切に願う。



気分を切り替え、次に、博打に耽っている連中に声をかけることにした。

(つづく)