ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

戻れ!オジアの軍隊がやってくるぞ!

【パラグラフ152→→→136:群狼たちの戦旗:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


隧道は拗くれた低木が疎らに生える他は岩だらけの谷底に延び、長年の風雨に削り取られた丘の頂上へと登っていった。
小休止し、馬に水を飲ませるが、小川とは言え上流の流れは速く、その水面は泡立っていた。
道中飛礫を投げて仕留めた山鳥を引き裂き、肢の一本をペイドに投げてやる。
兵糧要らず。これも上級狩猟術の恩恵だ。
わざわざ火を焚く手間も惜しいので生肉を咀嚼する。
再び馬を駆り、登り切った丘の頂上から麓を見下ろす。
……戦慄が背筋を這い上がってきた。





黒煙が北西の空を覆い尽くしている――シアダの街が燃えているのだ。
既に城壁は落ち、民家が炎に包まれている。
街の北側では、無慈悲な黒衣の兵士達が陣を張っている。
漆黒の隊列の上で、オジアの軍旗――銀月に浮かぶ黒狼――がはためいていた。


荷車や驢馬に持ち出せる限りの家財道具を積んだ老若男女が丘を登ってくる。
無言で蹌踉めくように歩くシアダの人々は、一様に恐怖と絶望の表情を浮かべていた。
「戻れ!戻れ!暗黒の軍勢がやって来るぞ!」
負傷した騎兵――頭に巻いた包帯に血を滲ませている――が叫んだ。
騎兵の言うとおり、このまま進むのは不可能だ。
シアダからの難民を掻き分けて前進したところで、南下するオジア軍と正面衝突するのは目に見えている。
ザーロへ引き返すか、西へ直進しモードリルの森を抜けるかの二択だ。


これだけ離れてさえ、オジア軍の立てる地響きが聞こえる。
馬首を巡らして丘を駆け下り、全速力で先程の小川まで戻る。
ペイドは訝しげな表情をしていたが、珍しく黙っていた。



方向認知術を身に着けていてチュータリーの階級に達していれば、227へ。
方向認知術を身に着けていないか、チュータリーの階級に達していなければ、127へ。


マグナカイの方向認知術はある局面では予知に近い働きをする――
ゆえに、身に着けていなくともこの選択肢が出た時点で、伏兵の存在を予知できるのだ。
そして――
漆黒の騎兵の一団が、俺の左手の峡谷を駆け抜けようと向かってくる。
この敵の通過を許せば、シアダの難民は挟撃され、為す術もなく虐殺されるだろう。
青銅の悪鬼めいた兜のリーダーが戦斧を掲げた――攻撃の合図だ。
血も凍る鬨の声を上げた騎兵達は、丘を駆け上り、凄まじい勢いで雪崩れ込んできた。


矢を矢筒から抜き、膝で馬を御しつつ、狙いを定める。
いかなカイ・マスターとは言え、俺単身でオジア全軍の侵攻を止める事は出来ない。
いわんや矢の一射をや、と言う状況ではある。
だが、このリーダーを殺すことで、シアダの難民の逃げる時間稼ぎにはなるだろう。


軍馬が一斉に地を蹴る轟音の中でも、矢が風を切る音は聞こえた。
――鎖帷子の隙間を貫かれた騎兵のリーダーが急に手綱を引き、その馬が蹌踉めき倒れる。
その主の体は遥か後方に投げ出され、音を立てて泥濘に落ちた。
動揺が騎兵たちの隊伍を乱し、連中は向きを変えて戻っていく。
一旦シアダの本陣に合流するのだろう。
「もういいだろう……何れにせよ奴らはまた攻撃してくるぞ」
弓を担ぎ、ペイドに続いてシアド河沿いに西へ向かう。



通過パラグラフ:152→24→311→127→209→303→136 治癒術の効果:+6点   現在の体力点:22点

(つづく)