ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ111→→→204:燃える男:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



そこは床も壁も継ぎ目無く滑らかな、迷路と言うよりは直線のトンネルという方が相応しい場所だった。
ザーダが呼び出したこの世のものならぬ霧は徐々に薄れていき、前方が見渡せる程度の薄闇が広がっている。
不幸中の幸い、武器以外の装備品は奪われていないが、流石に現状では心許ない。
太陽の剣を持たない俺の戦闘力点は20だが、武器無しのペナルティが-4されることにより、結果的に16にまで大暴落する。
マグナカイの念波動は戦闘力点を+4するが、その代償として体力点を2点失う為、長期戦には不向きだ。
可及的速やかに武器を調達する必要がありそうだ。


警戒しつつ前進する――やがて円形の部屋に着いた。
中央の床に大理石の台座が置かれ、鋼鉄の剣が無造作に載せられている。
一歩踏み出した途端に左右の石壁の一部が沈み、出口が二つ現れた。
剣そのものは何の変哲も無い代物だが――マグナカイの念バリアが台座から発散されている魔力を感知した。
徐にロープを取り出して輪を作り、牛飼いの伝統に敬意を払う意味で頭上で三回振り回して投擲する。
あっけなくロープは剣の柄に絡みつき、飾り気の無い重い刃が俺の手に引き寄せられるのに時間はかからなかった。
これで戦闘力点はようやく20。
念撃を加えれば22にまで回復するが、念撃は常時発動できる代わりに通用しない敵も多い。
剣の上級武術さえあればとは思うが、残忍な諧謔精神の発露とでも言うべきこの迷宮では贅沢は言えまい。
ここは素直に英国人の手並みを賞賛すべきところなのだ。
ペナルティに喘ぐプレイヤー心理を突いたいかにもな罠と見せて、遊び方次第で一発リカバーも可という訳だ――


数分も歩くと、トンネルは急に左折した。
不意にカイの教えが待ち受ける危険を告げ、曲がり角の向こうを注意深く観察する。
視線を落とすと、一方の壁から光が差し込んでいる。
見たところトンネルの先も他の迷路と同じようだが――?
いやもう。
誰がどう見ても罠だ。



光線をまたぎ、トンネルを歩き続けるか。
光線に当たって進むか。


これ見よがしな真逆の選択肢だが、ここは安全策を採り、光線を避けて進む。


ドッギャァァーン!!!


突然床から炎が燃え上がり、壁が覆い被さってきたッ!
反射的に後方へ跳び、直撃は免れたものの、吹き寄せる熱風が髪と睫毛を灼く。
体力点に2点のダメージ――一見大したことは無いが、今後の選択に対する警告としては十分すぎる。


突然断末魔の絶叫が聞こえた。
炎の中を何かが近づいてくる。
次の瞬間、炎に包まれた人影が見えた。
生きながら全身を灼かれる苦痛に叫び、藻掻くように腕を振り回し蹌踉めきながら向かってくる。



自分の身を守るか。126へ。
炎に包まれた男を無視して、炎の地獄へと飛び込むか。204へ。
トンネルを引き返すか。320へ。
ネクサスを身につけていれば、72へ。


炎に包まれた男を助ける選択肢は無い―― つまりこいつは「敵」なのだ。
そして、この選択肢には更なる巧妙な罠が仕掛けられているッ!
炎に飛び込むなど、普通なら自殺行為とも思える選択肢が並んでいる。
だが、ほんの今しがた、冒険者の一般原則に裏切られたばかりではなかったか。
プレイヤーを疑心暗鬼に陥れ、心理戦の裏の裏をかくことに無上の喜びを見出す――
悪意に満ちたトリックスターとして知られるマグナマンドの創造主が、素直にここを通すはずがないのだ。
暗闇に道を開くのは、「覚悟」のある者だけだ……
面白くなってきた……最悪で犠牲は必要だが……
この狼の「運命」は!「覚悟」が道を切り開く!!
逆に考えるんだ……「燃えちゃってもいいさ」と考えるんだ……ッッ!
キャストオフッ(脱衣)!
床を蹴って跳躍し、荒れ狂う炎の嵐の只中へとルパンダイブを敢行するッ!

(つづく)