ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

川海賊のナイフが投擲される

【パラグラフ224→→→パラグラフ286:血河を越えて #1:(死亡・8)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



流木止めに縫いつけられた川船は、見る間に狂騒を呈しだす。
霧の中、黒々とした甲虫めいた輪郭が迫ってくる。
抜刀したデルデン人満載の大型ボートだ。
襲撃を知った傭兵たちが甲板への階段を駆けあがってくる。
中の1人は状況に対応しきれず、飛来したナイフで胸を打ち倒された。
すぐに仲間が助けに行ったが、背後から船縁を乗り越えた海賊に一撃され、仲間もまた踏み躙られた。
「戦闘開始!」
隊長が怒鳴ると、部下たちは一斉に盾を並べ、猛然と戦い始めた。
船上に飛び交う剣戟と血飛沫、霧雨と波が混乱に拍車をかけていく。
殺戮の愉悦に顔を歪めた海賊の一群が俺の傍らに乗船してきた。
片耳が無く鼻まで裂けた痩身の海賊が、酔眼を大きく期待に見開き、歯茎を剥きだして笑う。
人間の命を奪うことを考えると嬉しくて仕方が無いらしい……永遠の極刑をくれてやるべきだな。



弓を持っていて、使いたければ、325へ。
他の武器で戦いに備えるなら、95へ。
戦闘を避けたければ、286へ。


しかし戦闘が始まって最初の選択肢で「戦闘を避けたければ」ってどうよ?とか思う。
此方は襲撃される側、しかも増水したストーン河のど真ん中で立ち往生なのだ。
軽いジャブを喰らわすべく弓を選択し、背中から矢を1本抜きだす。
これで背負った矢筒の残りは2本か――
肩から弓を外して甲板上で構えたその刹那、この選択が拙かったことに気づく。
川舟が再び流木止めに衝突したのだ。
だが何とかマグナカイの上級狩猟術を駆使して上体を安定させ、男の胸に狙いをつける。
霧雨を裂いて矢が唸りをあげるッ!!


矢は男の肩をかすめ、船の手すりから甲板に飛び降りようとしていた別の男の足に刺さった。
海賊はまだこっちに来ようとしている……(以下略)

弓を構えた(乱数表を指した)そのままの姿勢で思わず舌打ち。
6以上と言う厳しい条件とはいえ、上級狩猟術で+1のボーナスも得ておいて乱数表は「1」、最悪の結果だ。
即座に弓をかついで太陽の剣を抜き放ち、下の甲板へ飛び降りた。
男は乱杭歯を剥きだして鬨の声をあげ、片刃の短刀を構えて濡れた甲板を走ってくる。




デルデン人の川海賊 戦闘力点17 体力点23



いつでも逃げられるらしいが、さもありなん。
こいつはあまりに容易い相手だ。実に戦闘比は+8。練兵場の藁人形の方が戦い甲斐があるというもの。
だが、一合撃ちあった俺は己自身に戦慄した。
またしても出目が「1」。
いや、2連続の「1」というだけなら、さして珍しくもない。
狼の負傷も僅か4点、この出目で海賊には8点の痛撃を浴びせている。
問題は……乱数を指した先が、先程とまったく同じ位置だったと言うことなのだ――
これまでの冒険でも、何度か、こういう危難の瞬間があった。
狙えば狙うほど、集中すれば集中するほど、出目が等比級数的に低くなっていく最悪のループに首まで沈んだらしい。
咄嗟の判断で次の一撃をかわすが、乱数表の出目は「3」、背後から斬られて狼の体力−2だ。
戦闘から逃れたものの、このままでは拙い。こういう瞬間は何をしても裏目に出る。狼の経験則だ。
背後の梯子を敏捷に登りきり、上半身を引き上げた途端、短刀の一閃がブーツの底を掠めた。
熱したナイフでラードを切り裂くように、楽々と海賊の刃が梯子の段木を切り刻む。
危機は去っていなかった。
操舵甲板では船員の1人が海賊相手に絶望的な戦いを強いられていた。
瞬く間に船員の胸板に投げナイフが生え、振り向く海賊と、道板のタラップに足をかけた俺の視線が交錯する。
海賊は瞬時に手を伸ばし、たすき掛けにした負い皮から別のナイフを抜きだした。
梯子を上がったこの場所から操舵甲板に上がる途中のタラップは狭く、左右に逃れることができない。
指の間にナイフを挟み、海賊の腕が大きく後ろに引きつけられる――

(つづく)