ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ17→→→パラグラフ21:賢者の街:(死亡・7)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「君のような戦士こそがテカロ攻略の鍵となる。我々の部隊に加わらないか」
「夜明けには我々はテカロへ出発する。希望する以上の金貨を払えることだろう。是非一緒に来てくれ」
「………有り難う、隊長」
隊長の熱意を受けつつも応じる。
「新しい戦いにも興味はある。だが俺はまだバレッタでの仕事が残っているんだ」
「戦士にとって戦いより重要な事柄があるのかね」
隊長が反論すると、部下たちは大喜びした。酒を飲み干し、彼らにおやすみの挨拶を告げる。
俺の背に隊長の声がかけられた。
「もし気持ちが変わったなら、ソーレーンで我々に合流してくれ。テカロは、そこから船で二日かかるはずだ」
隊長に頷き返し、今度こそフロントへ向かう。
傭兵隊長と部下たちの熱気は少なからず俺にも影響を及ぼした。
バレッタの地図 を頭に思い浮かべ、一刻も早くブラス街へ向かうこと、探索の旅を成し遂げることを誓う。


カウンターで聞いた料金は3種類―― 相部屋(金貨2枚)か、二等個室(金貨3枚)か、風呂付の一等個室(金貨5枚)か。
歴戦のゲームブッカー的には相部屋と二等個室の価格差が殆ど無い点などに注意するのだろうが……
今日の俺は、躊躇いなく金貨5枚を払った。
バレッタのロアストーン ……遙か古のカイの師、初代マスターたるサン・イーグルの求めた叡智がすぐ間近にある。
いわば今夜はその前夜祭、景気づけのようなものだ。
鍵を渡され、最上階の個室へ向かう。
―― !!」
そして驚愕した。心底腰が抜けた。
汚い 部屋だった。


ある程度贅沢な部屋かと思ったのだが、狭くて汚かった。


もう本文にも明記されているし。
しかも室内には濛々と湯気が立ち籠めている。
特殊な嗜好の紳士方が好む暖房施設の一種かと思われたが、よく見ると発生源は部屋の隅の風呂だった。
金貨5枚もふんだくっておいてこれかよッ!
ウホッ!ファンタジー世界のクルージングスポット…かと思っただろうがッ!!
このド低能がァーッ!!!こんなんじゃ嬉しくないんだからねッ!!!
ツンデレ気取りでひとしきり怒ってから、窓を開け、換気しつつ湯船に浸かった。
……悪くない。
旅の汚れとともに手足の疲労をこそぎ落とし、おもむろにベッドに横たわる。
バレッタでのちょっとした贅沢は、それなりに高くついたが、それも良し。



―― 夜半、明るい光で目が覚めた。
―― 流れ星が太陽のように輝いて古都の上をよぎり、薄汚れた部屋に虹色の光を投げかける。
―― ぼんやりと天なる光に眩しい目を瞬かせ、再び眠りに落ちる。



クロスド・ソード旅館の鐘が鳴り渡り、あっというまに朝がやってきたように感じられた。
「さあ、起きた。起きた。勇敢な戦士の皆さん、朝が来ましたよ」
鈍器的な何かを叩きつつ、居酒屋の主人の声が早朝の廊下に谺している。
疲労した傭兵たちを起こすのはさぞ重労働だろう。忍び笑いしつつカイ・マントを身につけ、馬屋へ向かった。
太陽に通じる流れ星の光……か。
瑞兆を目にしたせいか、全身の疲労は跡形もなく抜けていた。体力点を3点取り戻す
いよいよだ。


目覚めたばかりの朝の町を、軽快に蹄を鳴らして進んでいく。
日干し煉瓦を敷きつめた広い通りがどこまでも西へ延び、朝食の香りが軒先から漂ってくる。
バレッタの中央に位置する水晶を敷きつめた広場に辿り着き、鏡のように磨きあげられた緑の石橋をくぐりぬける。
堂々たる威厳を備えた公共施設が店々の間から天に向かって聳え、いずれの建物も白とピンクの花畑に囲まれている。
公園の向こうには、明らかに雰囲気の違う白い砂利敷きの通りが、バレッタで一番高い塔へ続いていた―― 王の塔だ。
やがて、周囲の雰囲気が変わった。
傭兵や人々のもたらす雑踏が消え、水が泡立つ音と聖歌が風に乗って届いてくる。
茶色の長衣を着てフードをかぶった老人が、滑るように通りを歩く。
この街区一帯はいわば巨大な修学の場として、大学施設のような機能を果たし、様々な学問の研究が行われているのだ。
―― 賢者の街、ブラス街。
建物同士を繋ぐ背の高いアーチ型通路をくぐって、研究の中心となる大きな建物の中庭に出た。
今回の旅の終点に辿り着いたと思うと、何となく心が沸き立つ。


天 文 台 を調べるか。
図 書 室 を調べるか。
礼 拝 堂 を調べるか。


時間に追われている訳ではない。まずは図書室に向かう。
古の奇蹟を見出すべく、文献にあたるのだ。



通過パラグラフ:(17)→251→300→21  回復術の効果:+3点   現在の体力点:25点
(つづく)