ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ180→→→パラグラフ319:シリルス:(死亡・7)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



疲労の余り、カウンターにもたれ掛かる。
ロークは屈強の剣客だった。
洗練された見た目とは裏腹に、偏執狂的なまでに研ぎ澄まされた殺人剣。
俺の負ったダメージは実に15点にも達し、ラウンスパーの薬を飲んでいなければ死んでいたところだ。


念波動を使った代償――激しい頭痛を堪えて深呼吸し、蹴り倒された老人を助け起こす。
「おお…おお…有り難うございます…有り難うございます…このご恩は一生忘れません」
「気にするな。あんたの荷物を集めよう」


「私の名はシリルス。魔法使いです」
物静かそうな老人は自らの弱さを恥じている様子だったが、テーブルで一息つくと、身の上を語りだした。
「奥義を極めるに値しない人間で、人並みの才能しか持っておりません。大したことはできず、笑いと奇術でバレッタの宮殿の人々を楽しませ、それで食い扶持を稼いでおります」
「……!?」
バレッタの宮殿と聞いて、咄嗟に顔色が変わるのを隠しきれない。
シリルスもまた、俺の目の色が変わったのを読み取ったようだった。
バレッタの宮殿で働いているのなら、その情報量は先程の兵士たちの比ではない。
この老人にロアストーンについて訊ねてみるか……?
「シリルス。バレッタのロアストーンという言葉を耳にしたことはないか?」
「貴方は……?」
言葉を切り、眉を顰めた老人が用心深い視線を投げる。
「それは只の伝説に過ぎませんよ。ある者はロアストーン は恐るべき力を秘めていると言いますし、別の者はロアストーン を得ようとする者の思い込みに過ぎないと言います」
「………………」
「いずれにせよ、ロアストーン は数百年前に失われたのですよ」
口調と表情の僅かな変化。
それに気づかぬカイ戦士ではない。
老人は知っていることの全てを話した訳ではないらしい。
俺の正体を告げるべきだろうか。


だが、身に染みついた習性という奴は簡単に変えられるものでもない。
シリルスが何かを伏せているのと同様、俺も正体を伏せたままにすると決め、別れの挨拶を告げた。
ワインで喉を湿らせてから席を立つ。
と、老人は急に俺を引き留めた。
「明朝、私と一緒にバレッタへ向かいませんか。バレッタへの道は良く知っていますし、危険も心得ています。危険な道を一人で行くのは賢いとは言えません」
この先一人で旅するのを怖がっているのだろう。
暫し老人の言を吟味するが、しかし先程の例もある。
荒事となれば足手纏いになるのは火を見るよりも明らかだ。
生憎だが一人で行く――と告げようとしたそのとき、シリルスは俺の判断を覆す言葉を口にした。
「もしや……貴方はロアストーン を探しているのではありませんか」




通過パラグラフ:(180)→281→83→239→319  回復術の効果:+4点   現在の体力点:8点
(つづく)