ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

ハーコンが真の力を現す――!!

【パラグラフ289→→→パラグラフ278:死仮面の公子:(死亡・6)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


ザカーン・キマー帝は、近衛兵の一軍をもってしてもこの俺を捕らえることは出来なかった。
その教訓を糧に、ハーコンが確実に俺を仕留めようとするなら………
『マグナカイの書』を発掘中だと見せかけて、『マジャーンの墓』深く俺を誘い込むのではないだろうか。
カイの第六感よりなお早く、鼓動が戦いの律動を刻み始める。
かつてない残酷な死の予兆が、ぎりぎりと心を締めあげていく。
俺の全細胞が、狂ったように叫び立てていた。


武器を抜け。

今すぐに戦闘に備えろ。

そこにいる邪悪に、



暗黒の公子、ダークロード・ハーコンに命を賭して抗え――ッッ!!!



絶叫を上げた心の何処かが音を立てて切れるのと。
玉座にかかる影が動き出したのが同時だった。
「!!!!」
悪夢のような呻き声が響き、今まで聞いたこともない耳障りな言葉の羅列になる。
およそ人間の喉からは決して発せられるはずのない奇怪な呪詛が、玉座から遠雷のごとく響き渡った。
あれこそ、アールナクの卿、ダークロード・ハーコンの真の姿なのだ。


ハーコンが玉座から立ち上がる。
黒鉄の籠手の中で燃える蒼い魔石が蠢き、魔力の渦の中心から膨大な負のエネルギーが解き放たれた。
轟音とともに迫ってきたのは、スカイライダーで俺を襲った数倍もの威力を秘めた大火球だ。
「これが汝の運命だ、カイ戦士!!!」
ソマーランド語で死刑判決を宣告するハーコンに狼の咆哮で応え、ソマースウォード を抜き放つと同時に床を蹴る。
人ならざる鍛冶の鍛えた黄金の刃、あらゆる魔法を無にする太陽の剣を叩きつけ、蒼い火球の軌道を逸らす。
だが、壁に激突した魔力の塊は、堅固な岩壁に2メートルもの大穴を穿ち、俺は衝撃で転がった―― 腕から剣をもぎ取られて。
太陽の剣は塵のたゆたう空気の中を弧を描いて飛び、石柱に垂直に突き刺さってしまう。
邪悪な魔法を吸収する太陽の剣ですら、いともたやすく弾かれてしまうのか。
衝撃の余韻に膝ががくがくと軋み、呼吸が乱れている。
「カイ戦士」
ハーコンは低く単調な声音で告げた。
「汝の命が尽きるまであと数秒だ。その数秒を呪うがいい」


再び輝きだす魔石と太陽の剣とを交互に見る。
舞いあがる砂塵に紛れて別の遮蔽物に身を隠すか、ソマースウォード を取り戻すか。
いずれにせよここに留まることは自殺行為だ。
今や残された武器は幅広剣のみ。
そして定命の者の武器では、闇の半神に傷一つ負わせることは出来ないのだ。
ならば――罠だろうが格好の標的だろうが、俺の行動は一択しか無いッッ!

(つづく)