ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

クラーンと騎り手の斥候だ

【パラグラフ300→→→パラグラフ229:マグナカイ探索行:(死亡・6)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



『スカイライダー』の振動と小人たちの大鼾で目覚めたのはまだ夜明けだった。
小人用の寝台で器用に寝返りをうち、昨日のバネドンとの会話を思いだす。



「ソマーランドの未来は私たちにかかっている、ローン・ウルフ」
帝都バラキーシュでの体験をすべて聞きおえたバネドンは、厳しい声で断言した。
「『マグナカイの書』が隠されているという『マジャーンの墓』については、私もドライ・メインの民から聞いたことがある」
「場所も知っているのか?」
「いや、噂だけだが。彼らが言うには、恐怖の死の待つ場所だという。そこに行って死ぬ目に遭わぬ者は無いらしい」
「………」
ダハール山脈の向こう、バル・ロフタンのオアシスの近くにあるとしか知られていない」
「情報が少ないな」
「何しろ、彼らの墓は巧妙に隠され、僅かな痕跡はドライ・メインに積もる砂で消えてしまうからね」
考えるにつけ、絶望的になっていくが、バネドンは怯んでいなかった。
「大丈夫だとも。すべてが失われたわけではないんだ、ローン・ウルフ。案内できる者がいる」
「生還者がいるのか」
「ああ。彼の名はティパサ・エダルーク、通称『流離いのティパサ』だ。今までに『マジャーンの墓』から生還し、かの場所を口にできるのは彼だけなのだ」



船室から出ると、スカイライダーは澄み切った朝の大気の中を飛行していた。
こうして頭を整理すればバネドンが急ぐ訳もわかる。
ティパサが敵の手に落ちるようなことがあれば、手がかりはなくなってしまうのだ。
先んじてティパサの故郷イカレシュに向かい、彼を見つけださねばならない。



「クラーン乗りだ……夜明けと共にやってきたらしい」
バネドンが指さすまま、眼下の見慣れぬ谷に目を凝らした。
「斥候か」
スカイライダーは山脈の頂すれすれを飛び、数千メートル下には険しい谷が広がっている。
谷を埋め尽くす奇怪な丸石の柱は『クース』―― 針の意だ―― と呼ばれ、その一本の頂上に敵がいた。
翼を休めたクラーンと望遠鏡で偵察するドラッカー
彼らは一時間ほど谷を調べ、飛び去っていく。
「帆をあげろ、ノルリム。ここから高速で飛ぶぞ」
バネドンが声をあげ、スカイライダーが一層の轟音で唸り始めた。



・黒水晶の立方体をもっていれば、229へ。
・黒水晶の立方体をもっていなければ、247へ。


へ?
黒水晶の立方体 というのは、逃げだす時にドラッカーの隊長が身につけていた品物か?
こんな時になぜ……?
訝しがりつつ荷物から取りだし、俺は驚愕で声を失った。


立方体 が鈍く振動している。


遠くでクラーンの鳴き交わす声が響く。
この立方体は振動によってクラーンに位置を伝えることができ、それが敵の追撃を容易なものにしていたのだ。
立方体 の狼煙のような性質に気づき、俺は慌てて船外へ捨てようとする。
……そこに、突然死(サドン・デス)が潜んでいるとも知らずに。


投げ捨てる寸前、立方体は俺の手の中で爆発した――――

(つづく)