ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

星明かりの砂漠をスカイライダーが飛ぶ

【パラグラフ392→→→パラグラフ300:蛮勇飲力:(死亡・6)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



どうやらボア・ビールの酒毒は覿面に俺の脳を侵略したようだった。
軽くてもバッドトリップ、最悪心停止の可能性だって否定できない。
……何にせよトレスポに出てくるジェダイ・マスターばりのアヘ顔を晒すことになるんだろう。
忌々しいが仕方無い。
潔く運命の時を待つ。


ゴゴゴゴゴゴ。。。。。。。。。


―― 秘 奥 義 ・ サ イ コ ロ 交 換 : 発 動 ――


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 。。。。。。。。。。。。。。。。


……何だ?
ややあって思いだす。
俺は飛行船に回収されたとき、交換していたのだ。
『9と、4以下の数字』とを。
つまり0が9に…裏返ったッッ!!!


酒が裏返った。
それだけは確かなようだ。
陰と陽2つの毒素に俺の体内の何か闘志によって脳から分泌された脳内麻薬か……
あるいはそこの立つ小人(生憎と船内には野郎しかいないのだ)が流した涙によってもたらされた多幸感
そしてその昂ぶりから形造られてしまった化学物質か……
あるいはそれら全てが俺の内部で出会ってしまい
化学反応を起こしスパーク……


酔眼で虚空を凝視しブツブツ呟く俺なのさ。
小人たちは俺の一挙手一投足に怯えつつも、覆い付きパイプから薄青い煙ばかりを濛々と吐きだす。
5分後、ノルリムがジョッキを掲げて乾杯の音頭を取った。
ボア・ビールを征服した小人の中の人間、ローン・ウルフに乾杯!!」
小人たちはノルリムの取って付けたような冗句に腹を抱えて笑い、遂に明らかになった真の勇者であるところの俺を賞賛してくれた。
気持ちよく酒が回り、舌の軽くなった小人たちは自らの武勇伝を語りたがる。
それはバネドンについての話でもあった。




かつて小人たちは、南テンタリアスを航海する普通の船乗りだった。
テンタリアスは、ドゥレナーのライムリフトのように、大規模な地滑りでできた全長1600キロもに及ぶ大河だ。
マグナマンド世界を南北に隔てるテンタリアスは、同時に交通や貿易を支える大動脈でもある。
前の船長・クアンは博打好きで、それが仇となった。
クアン船長はある男との賭け札で船も積荷も船員も失い、男の真の職業に気づいたときは何もかも手遅れだった。
その男というのは勿論バネドンのことだが、以来ノルリムたちは南ソマーランドを旅しつつ数々の冒険をこなしてきた。
『スカイライダー』自体はデッシの善の魔法使い、古マギ人の手によるものだった。
デッシの地を恐怖に陥れた怪物ガガドスを退治した報酬として、この魔法の飛行船が贈られたのだ。



ノルリムたちはバネドンを尊敬し、魔術師と共に数々の冒険を楽しんでいた。
俺とバネドンの会話もとっくに盗み聞きされていたらしく、新たな探索と危険の予感に興奮しているのだ。
歓談のひとときが過ぎ、遂に、厳しい一日の試練が俺の五体にのし掛かった。
――帝都バラキーシュへの到着。
――マオウクの罠。
――決死の逃避行、リムデスの脅威、そしてバネドンとの再会。
疲労が徐々に意識を遠くさせ、ノルリムに寝室まで案内されるや棒のように倒れ込む。

(つづく)