ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ203→→→パラグラフ336:盟友の翼:(死亡・5)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



死を覚悟した、その時……高速旋回する視界が何かをとらえ、俺は奇跡を確信した。


飛行船にはトラン魔法使い協会のしるしが描かれている


地平線の雲間から、輝く飛行船が姿を現す。
ウノラム河の川船ほどの船体には三角の帆が2枚張られ、湾曲した舳先から後方へと風を孕んで広がっている。
沈みゆく薄明かりの中、マストの上で三角旗がはためく。
風音の中で、微かに聞こえる舟唄の響き。
はじめはこれらすべてが残光の悪戯か、死に逝く者の見る幻影かと訝しんだ。
だが、眼前の光景は幻でも、ダークロードの悪夢でも無い。
間違いなく本物の飛行船が、落下しつつ俺たち目掛け、急速にバンクして大気を駆け下ってくるのだ。
水晶の星型のペンダント が胸で輝く。
では、あの船にいるのは……
再び目を上げた俺は、奇妙な船の中央に設えられた射台に脚を踏み締めて立つ船長の姿を捉えた。
伝統あるトラン魔法使い協会の長衣を纏った若き魔術師。
かつてラウマスの廃墟で共にダークロード軍と戦い、友情の誓いとして水晶の星型のペンダント を譲り受けた盟友。
――――魔術師バネドンなのだ!
飛行船はクラーンの編隊よりなお早く空を翔け、こちらに接近してくる。
そのとき、イチカーが苦悶の叫びあげ、翼を硬直させた。
あまりに援軍の出現に気をとられていたため、イチカーの変調に気づくのが遅れた。
嘴から血を流し、ここまで俺を運んでくれた翼ある友が断末魔の痙攣に震えている。
遂にその首ががくりと垂れ、俺は虚空に投げ出された。
バネドンが早いか、クラーンが早いか、俺の死が先か。
すべては運のみ。
未来はただ乱数表にかかっている……ッ!!



・0から4なら、374へ。
・5から8なら、254へ。
・9なら、261へ。


9だけはダメ!ゼッタイ!
十分の一の確率。どう見ても即死ルートだ。
ここまで低い数字に苦しんできた俺が、必死になって9以外を出そうとしているのだから皮肉ではある。
覚悟を決め、乱数表を指す。


……結果は「5」。ただちにパラグラフへと飛ぶ。
(つづく)