ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

閃光と共にドラッカーの姿は消えた

【パラグラフ201→→→パラグラフ285:ダークロード・ハーコン:(死亡・4)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。









第 二 部








階下の広間ではザカーン・キマーとダークロード・ハーコンとの緊迫した会談が続いている。
唐突にそれを断ち切ったのは……追撃の魔手だった。
右手の通路から2人の兵士が忍び寄る。
シャーナジムではない。
漆黒の鎧に醜いデスマスク
ダークロード軍の兵士、ドラッカーのものだ。
1人が手にした鎖―― ぴんと張りつめた手綱―― を放す。
矢のごとき勢いで、バサゴニアの戦闘犬アカタズが喉もとに喰らいついてくるッ!
体力もまだ19点、傷は完治していない。
しかも、階下には邪悪な力に溢れた闇の化身がいるのだ。
こんなところで戦闘になれば、挟撃されることになりかねない……。
「彼奴を殺せ!」
アカタズを避けて走りだすと、憎悪と憤怒に満ちた唸り声がホールを満たした。


「ローン・ウルフを殺すのだ!!」


主の命令を受けて全身に殺意を滲ませたドラッカーが、ヘルジェダドの溶鉱炉で鍛えた黒い剣を鞘走らせる。
階段を飛び降り、銀のアーチ通路を駆け抜け、玉座の間を見下ろすバルコニーを全力疾走する。
背後から獣臭を嗅ぎ取り、本能的に身をかわす。
アカタズは鼻から大理石の支柱に激突した。
間髪入れず踏み込こみ、戦闘犬の急所に致命的な一撃を喰らわす。
と、二つの危機が俺を襲った。
目前にドラッカーが迫り、階下でダークロード・ハーコンが籠手に覆われた拳を振りあげる。
ハーコンの拳から青い閃光が放たれたとき、ドラッカーが躍りかかってきた。
輝きに視界を奪われながら、勘でドラッカーに反撃を試みる。
ドラッカーの剣は俺の腕に傷を負わせた(体力−2)が、俺の剣先に、ドラッカーの胴体は存在しなかった。
ハーコンの喚びだした雷が、ただの一撃でドラッカーの肉体を消滅させたのだ。
一瞬、ハーコンと俺の視線が交錯する。


―― 俺は、これ程にも邪悪な敵と戦っていたのか。









心を貫くのは戦慄だった。
正体を隠す鎧装束にも関わらず、俺はハーコンの真の姿を幻視していた。
常人の倍近い長身。
大型の肉食獣を思わせる均整のとれた優美な体躯。
陽光を浴びたことのない、血管の透けた皮膚。
若々しい美貌には、歳経た人ならざるものの、悪意に満ちた嘲笑が浮かんでいる。
そして、体内から溢れ出した大腸―― 球根状の付属器官が垂れ下がり、収縮を繰り返している―― が、肋骨のあたりまで絡みつき、不気味に蠕動していた。
人の姿を模していながら、その肉体は悍しいまでに非人間的な、暗黒の美意識によって創造されているのだ。


無論、ホルムガード包囲戦でも、ダークロード・ザガーナの大天幕を目にしたことはあった。
だが、直接この眼でダークロードと対峙するのは初めてのことだ。
あれこそが真の敵。
あれこそが、暗黒神ナールの生みだした業罪なる一柱。




―― 俺は、あの男に、ダークロード・ハーコンに、勝てるのか。




神なるものに相対した時に、人の深奥から来る畏怖。
それは、絶望に向かって問いかけるのと、同義だった。
文字通りの意味で脱出路を求め、俺はバルコニーを疾走した。



通過パラグラフ:(200)→201→285→  回復術の効果:+2点   現在の体力点:18点
(つづく)