ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ102→→→パラグラフ194:脱獄進行中:(死亡・4)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



北へ進むと、すぐに東西に走る廊下にぶつかった。
東に向かった先には階段が下へ伸び、西には銅のボルトで締めつける鉄板で補強された頑丈な樫の扉がある。
注意深く窺うが見張りの気配はない。
階段や日の高さから見て、宮殿の塔の一つなのだろう。
なら、順に部屋を一つ一つ見ていくか。
いつもの冒険者根性ではなく、奪われた荷物を取り戻すという大義名分もあることだ。
看守の鍵 で西の扉の施錠を外すと、意外にも、そこは部屋でなく階段だった。
下りていった先は小さな部屋で、一対の鉄扉を黒服の衛兵が見張っている。
武器や鎧の並ぶ壁には、御親切にも目的の標識が。


『宮殿武器庫』


そう、看守が口にした場所。
奪われた俺の装備は間違いなくここにあるはずだ。
物陰に潜み、カイの擬装術でソマーランド訛りを誤魔化しつつ叫ぶ。
「急いで来てくれ!北方民が逃げだした!」
「何っ!」
扉の影でじっと待ち、足音から十分引きつけたと判断し、駆けあがってきた衛兵に蹴りを喰らわす。
階段を転げ落ちる衛兵を追撃して飛び降り、とどめを刺しに行く。
しかし、その必要はなかった。
生気のない瞳が裏返る。
落下の衝撃で首を折り、既に兵士は死んでいたのだ。
残念ながら、死体の持ち物は金貨4枚 以外は剣にナイフに看守の鍵と、変わり映えのしない内容だった。
鍵のかかっていない鉄の門は音を立てて軋み、武器庫への道を開く。
ここも無人のようだった。
この塔は狭い通路と頑丈な扉を組み合わせ、少ない衛兵で守っているらしい。
武器庫の長い廊下を進んでいく。
突き当たりの作業台には、槍の穂先や剣の柄、鎧を補修する工具などが雑然と散らかっていた。
引き出しや棚を次々にこじ開けるが俺の装備は見つからない。
机上の黒皮の本を調べるかという選択肢があったので選んでみると、それは武器庫から運び出された品物が列記された保管日誌だった。
カラ・カラの守備隊が発注した槍と剣、バカール山脈からの金製品、修理予定の武器などなど。
栞がわりの羊皮紙には『青銅の扉』と表記されていた。
今日の日付のところに書かれていた67という数字が気になって頭に叩き込む。
とはいえ、あるはずの装備が無いのは困る。
一刻も早くソマーランドへ帰国し、新皇帝の邪悪な意思と、帝国の実情を知らせることが俺の使命なのだ。
だというのに。
何だってよりによって、
災いをもたらすバシュナのナイフ を武器にしているのですか俺?
いかんせんバシュナのナイフ はダークロード・バシュナ復活にかかわる物騒な代物なのだ。
取り戻すまで国に帰れないのは言うまでも無い。 


仕方なく格子戸をくぐった次の間には狭い階段が北壁の扉へ続き、階段の影に木の箱が置かれていた。
勿論、調べない訳にはいかない。
罠に備え、転がっていた柄杓で上蓋を開ける……
俺の鼻先で、爬虫類の生きた罠が赤い舌を出していた。
木箱に収められた宝飾ほこ の上に番人めいて鎮座するのは、バサゴニアの大蛇、ヤスだ!



(つづく)