ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

死の戦輪

【パラグラフ132→→→パラグラフ75:死の戦輪:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



広い居酒屋の中はがらんとしていた。
カウンターに立つ老婆は苦しそうに歪んでいる。(原文ママ
老婆の衣服は何故か男物で、誰もいないはずのテーブル席に、ビールが半分以上入ったジョッキが並んでいる。
店内の左右には中二階へ伸びる階段があるが、そこにも人の姿は無い。
「……ローン・ウルフ」
「……ああ」
明らかにおかしい。
直前まで 誰 か が ここにいた。
だが、すべては覚悟の上だ。
「なあ婆さん、あんたこの店の主人か?」
話しかけつつ慎重に近寄る。
「全員にビールと、あと質問が……」
俺が一歩も踏みださぬうち、老婆の体がかしいで倒れた。
最も出口に近かった隊員が警告を発し、それが彼の最後の言葉となる。
待ち伏せだ!」
言い終わる前にその体が衝撃で吹っ飛んだ。
鋭い刃を持つ鋼鉄の円月輪が深々と胸にめりこんでいる。
バルコニーからの投擲をまともに食らったのだ。
窓や扉を押し破り、山賊たちが怒涛の勢いで押し入ってきた。
吶喊する2人の首を抜き打ちに刎ねるが、倒れた死体の向こうに浅黒い顔の3人目が立っている。



山賊 戦闘力点17 体力点27


戦闘比 マイナス3
死ぬ気で剣を振るうが、こんな時に限って、ミスこそないもののクリティカルも出てくれない。
四合ばかり剣を交えた時点で、俺のダメージは15点。
敵の体力はまだ7点もある。
「まだまだァ!!」
気合を入れなおした5ターン目……よりによって乱数表は3だ!!
双方のダメージは―― 自分の目を疑う。こっちが5点も食らったのに、敵はたった3点!?
このダメージを喰らったら、俺の体力は 残り2点 じゃねーか!
有り得ないほどの弱さ。
最後のカイ戦士が聞いて呆れる。
たった一人の雑魚相手に生死の境を彷徨うとは……冗談じゃあない。
もはや普通に剣を交えるべきタイミングではなかった。たまらず叫ぶ。


「秘 奥 義 ・ サ イ コ ロ 交 換 !!」


今の5回戦目の乱数「3」を、クリティカルを出せる数字「9か0」と交換する!
これでさっきのダメージ5点はチャラ!敵には10点のお返しだ!
ブッ飛べ、この野郎―――― ッッッ!!!



息が荒い。全身から血を流しすぎて意識が遠くなる。
ゲームブック業だって万能じゃあない。
特に制限プレイ中の今は尚更だ。
残り 体力 7 点 か……勝ちはしたから、連戦でさえなければ次のパラグラフで1点回復できるが……
現実ははるかにシビアだった。
息絶えた敵が倒れ伏すより早く、横から別の山賊が斬りかかってきたのだ。
「う…がァァァァァッッ!!!」
苦痛をこらえて咆哮し、よろける体でどうにか踏み止まる。
さらに 体力を 2 点 失う。1点の回復と差し引きでマイナス1、残りは6点しかない。
居酒屋は既に阿鼻叫喚の坩堝だった。
敵も味方も、生死を問わず血塗れで、部下を援護するどころか足の踏み場すらない。
不意に誰かに肩をぶつけられ、バランスを崩して血濡れた床に転倒する。
その時、開きっぱなしの裏口の扉が見えた。脱出口だ!
最早謎を解くどころではない。
生き延びることを優先し、屠殺場と化した店内を這っていく。
だが次の瞬間、俺は青褪めた。



「乱数表」をさせ。擬装術を身につけていれば、「乱数表」で指した数に3を加えることができる。
・0から5なら、192へ。
・6から12なら、16へ。


……この瞬間、俺は死神の貌を覗き込んでいた。


通過パラグラフ:(210)→132→280(戦闘)→75  回復術の効果:+2点   現在の体力点:6点
(つづく)