ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ215→→→11:奇妙な虜囚:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



廊下の角を曲がり、追っ手が無いと分かって一息つく。
ゴロゴロという低音はさらにはっきりと聞こえてきた。
通路を進むと左手に石扉があり、小さな覗き窓から奇妙な光景が見えた。
黒い服を着た男が、床にチョークで書かれた星印の中央に跪き、黙然と項垂れているのだ。
レバーを下げて室内に入ると、男はフードの陰で目を光らせた。
「そこにいるのは誰だ?」
か細く呟いた男は、俺の正体を悟ったのか勢いこんで立ち上がった。
「おお、カイ戦士!!私の名はタイゴン、ラガドーンの商人です。リュークでアイス・バーバリアンに捕らえられ、今はボナターという魔法使いの裁きを待っています。彼が私の運命を決めるのです。どうかこの魔法の星印から出していただければ、できるかぎりのことは致しましょう」
「ああ……ああ。少し待ってくれ」
取り憑かれたように喋り散らすタイゴンを尻目に、俺は床を調べる。
実に奇妙な―― そして面白い状況だった。
この星印は囚人を閉じ込めるための結界のようなもので、外側からしか解除できない。
星印の一部を削れば、すぐに男を解放してやれるだろう。
もちろん面白いといったのはこの星印のことではない。これ自体はオーソドックスな仕掛けだ。
「どうでしょう?解放していただけますか?」
「ああ……まあ、出来ないこともないが」
俺は頭を働かせつつ、商人のタイゴンを見つめる。
「あんた、どうして俺が簡単に魔法を解除できる……などと思ったんだ?」
「え?」
一つ目の疑問。
当然のように俺が解除できると思い込んでいるが、そもそも普通の商人に魔法に関する知識など……
「ボナターがそう言ったのです。自慢げに、外からなら簡単に解除できると」
「……そうだったのか」
俺はなおもタイゴンを観察していた。この男はいかにも朴訥とした顔つきをしている。
その言葉を信じてやりたいのだが……
「ならばタイゴン。あんたの故郷…ラガドーンについて簡単に質問させてもらうぜ?」
「………」
タイゴンは無言でこちらを見返した。

(つづく)