ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

教えの階級

【パラグラフ314→→→264:異界の魂:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



霧の向こうから感じるのは、まぎれもない強力な生命体の波動だ。
意識を集中させるうち、不意に俺はカイの師から学んだ『バガディンの門の伝説』を思いだす。
自分たちの氷の世界を捨て、マグナマンドにやってきたアイス・デーモンの話だ。





アイス・デーモンは実体もない不可視の生命体で、本来は時空間を越えた異界に存在する純粋エネルギー体だ。
かつてアイス・デーモンは、自らの世界と、このマグナマンドの間にあったバガディンの門を見つけると、待ち受ける運命も知らず競ってこの門をくぐり抜けた。
一方、古代人もアイス・デーモン同様この門を発見し、くぐり抜けてくるアイス・デーモンの魂を次々と水晶に封じこめ、その力はイカヤの要塞建設に利用されたのだった。
今も要塞内を照らすミラール・ボゥルにはその魂が入っている。
アイス・デーモンが封じられた水晶は、決して破壊してはならない。
彼らは幾千年にわたって恨みを募らせ、水晶から解放した者の体に乗り移ってしまうのだ。





記憶の海から浮上した俺は、全身に冷たい汗をかいていた。
ここでこの記憶が浮かぶということは、つまり、この先に待ち受けているものこそ……
ソマースウォード の柄をきつく握りなおし、霧たちこめるアーチ通路を再び歩きだす。
そして、その光景が目に飛び込んできた。
薄暗く冷気に満たされた……古代人の秘密寺院だ。
柱が林立し、石英花崗岩がパッチワークを織りなす床には石の欠片や氷が散らばる。
北の壁には生贄を捧げる祭壇があり、滑らかな白い石を彫って作った奇妙な彫像が横たわっていた。
彫像の頭と足元には黒い棒があり、祭壇の穴から突き立っているようだ。
ここからの出口は――
祭壇の左側、暗いアーチ形通路の先に下り階段が闇の底へと通じている。
より慎重な行動が求められる時だった。



寺院を通り抜け、階段に向かうか。
石英で作った石版の上だけを通って寺院を通り抜けるか。
花崗岩で作った石版の上だけを通って寺院を通り抜けるか。



カイの第六感も、ここでは役に立たない。己の直感のみがすべてだ。
(つづく)