ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ52→→→147:イカヤ突入戦・その1:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



扉まであと30メートルというところで、氷の割れる音に、俺は足を止めた。
おかしい。
この広間に生き物が存在しないことはすでに確認済み。
ならば、近づいてくるこの音は……!?
振り向く俺は信じられない光景を目にする。スロープ下の盛り上がった氷が動きだし、とぐろを巻いていくのだ。
見る間に鎌首をあげた銀色の大蛇が、スロープを滑るように登ってくる。
迂闊だった。
広間には無数の人骨が転がっていたことを今更ながら思い出す。
死ねばそのまま死体が凍りつく環境で人骨が存在する理由――
人間を捕食し、消化する生物がいたからなのだ!
おそらく、俺のように不運にもクレバスから迷いこんだ罠猟師やアイス・バーバリアンが餌食となったのだろう。
迷わずスロープを駆け上がり巨大な石の扉に取り付く。
だが一枚板の表面には鍵穴も窪みも無い。
絶望に駆られたとき、近くの壁に組み込まれた花崗岩のブロックが目に入った。
三角形の切込みに目が吸い寄せられる。

・青い三角形の石を持っていれば、41へ。
・持っていなければ、265へ。

「……アァァァアア!?」
フラッシュバックが脳裏をかけめぐり、焼肉バーバリアンとの遭遇まで記憶が引き戻された。


素早く首を引っ込めた。
焚き火の側には2人のアイス・バーバリアンが骨の槍を携え、暖をとっていたのだ。
青 い 三 角 形 の 石 を首から下げ、襤褸をまとって一心に火を見つめている。

あの時の青い石じゃねーかァァ!!!
誤算だった。奴らを殺して奪っておくべきだった。
一瞬、禁断の13番目のカイの教え――『バイツァ・ダスト』が頭をよぎった。
この教えは、失った体力点、得たアイテム、乱数表の運試し、すべてを前のパラグラフまで巻き戻す。
だが、その考えをすぐに放棄する。
そこまで追いつめられているわけじゃあない。正直やりすぎだ。
なんてことない些細なトラブルなんだ……たかが蛇一匹をブッ殺すってだけのよォォ!!



クリスタル・フロストウィルム 戦闘力点15 体力点30


氷に擬態する珪素生物クリスタル・フロストウィルムは水晶の牙を光らせ、硬い皮膚を脈打たせて襲ってくる。
だが、その硬い体も ソマースウォード の前では熱したナイフの前のバターも同然。
戦闘比は実に +11 。圧勝だ。
乱数表も0。クリティカルヒットで、一撃の下、胴と首を切り離していた。
盛大に蛇の首が転げ落ち、粉々になった蛇体は溶け崩れて氷になった。
残されて悪臭を放つ胃の内容物から、俺は銀の鍵 を見つけだした。
腐食性の酸―― 蛇の強力な胃液だ―― で体力点を1点失ったが、銀の鍵 をカイ・マントにしまう。
とはいえ、扉はこの鍵では開きそうもない。
どうしたものか……


要塞内部に入る手段を求め、周囲を調べまわっていた俺を現実に引き戻したのは、血も凍る咆哮だった。
『 恐 怖 』が、広間に踏みこんできた。

(つづく)