ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ113→→→225:牢獄船団の最期:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



ソマースウォードを握ったまま、どうにか片手で櫓をよじ登る。タイミングを計り、素早く頂上の縁に足をかけた。
不意打ちを仕掛けようとした瞬間、嘲りを含んだ声に凍りつく。
「お前の死を喜ぶようになるとは皮肉なものだな、ローン・ウルフ」
「ボナター!!裏切りの代償、払ってもらうぜッ!!!」
あらん限りの怒りと殺意を込めて俺は吼える。
背後から攻撃するはずが、いつの間にか塔の反対側にボナターは移動し、俺を左手で指さしていた。
狙いは――無防備な俺の頭部。
「フワハハハァ!愚かな小僧だ!お前の冒険は失敗に終わったんだよォ!死ねェェィ! 魔貫光殺砲!!!」
老獪な悪役声で高笑いし(もっと言うと青野武声で)、ボナターは一直線に地獄の焔を放った。



……その瞬間は、よく覚えていない。



俺の頭部を狙った焔の矢は、寸前でソマースウォード へとねじ曲げられた。
排水溝に吸い込まれる泥水のように、黄金の刃が血の色の焔を吸い尽くす。
続けざまに二度三度と放たれた邪悪な魔法も、ことごとく太陽の剣に呑み込まれていった。
「そ、そんな!そんな馬鹿なぁぁぁッッ!!(やっぱり青野武声で)」
ボナターは恐怖と混乱の叫びを上げ、宝石のあしらわれた額冠を投げつけてきた。
見る間に足元に炎が広がり、有毒な瘴気が俺とボナターの間に立ち籠める。
やむなく甲板に飛び降りた時には、既にボナターは狂ったようにボートを操り、牢獄船団から離れていった。
迷わず海に飛び込みボナターを追うが、ボートに魔法でもかかっているのか、見る間にボナターは遠ざかっていく。
獲物を取り逃がしたことに歯噛みしていると、魔女の悲鳴じみた船体の軋みが辺りを揺るがした。
汚れた海面から見上げると、いましも炎上した牢獄船団の旗艦が傾き、忌まわしい黒い船体が破壊され、海中へ没していくところだった。
どうにかドゥレナー軍艦『カルカーム号』まで泳ぎ着く。
「よかった、生きていたか。犠牲者も数多く出たが、君がそこに立っているのを見て本当に勇気が出てきた」
「アクシム卿も無事だったんだな。なによりだ」
「ローン・ウルフ見ろ!牢獄船団が、旗艦と運命をともにするぞ!!」
アクシム卿が指さす先で、旗艦を失った無数の船団が溶け崩れていく。
実体を失った亡霊の船団は、朝露が消えるように深海の墓場へと戻っていった。
ドゥレナー軍と太陽の剣とが、忌むべき牢獄船団を打ち破ったのだ。



カルフェン提督が全軍を呼び集める。
パックス港を出る時は70隻だったドゥレナー艦隊は50隻に減っていた。
失ったものは大きかったが、兵士たちは勝利の余韻に疲労を忘れ、戦意はなお高かった。
王都ホルムガードは目前だ。

(つづく)