ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ3→→→150:『ゆらワン(略称)』・必殺ゴルゴチョップ:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



凍りつく俺に背後から絡みつく女の手。もっとも、この状況を喜ぶ奴はいないだろう。
何せ俺は身動きを封じられ、首筋にかかった繊手の先には、鋭い刃が月明かりを反射しているのだから。
「……何の、用ですだか?」
「旅の最初に私が言ったこと、覚えている?」
黙っていると、少しだけ彼女は声を落とし、曇らせた。
「私は最も高い報酬を出す者のために働く、有名な冒険者なの」
「そうですだか。で?連中に引き渡す気がないなら、俺にかまわねえでほしいですだ」
「できるわけないじゃない!なぜ牧師があんな剣の達人なの!何が起きてるの!?」
激した口調で一気にまくしたて、口を噤む。
「黙っていると思ったわ。だから、そう……あなたが私を雇うか理由を明かすまで、この刃を引っ込めるわけにはいかないわね」
見たこともない神妙な面持ちでビベカが俺を覗きこんでいた。


なんだ、この状況。
そんな目で俺を見るな。どうしろっての。
こういうのすげー苦手なんだっつーの。
クッソ……
また俺が折れてやんなきゃいけねーのか……
無関係な連中は巻き込みたくねーってのに……


ビベカを刺激しないようゆっくりとした動作で、俺は懐からさっきの小ビンをとりだす。
「パーションの持ち物だ。あとで俺の部屋に差し入れられたスープ皿を調べるといい」
「これ、ナダーンの樹液じゃない……!?あなた、まさか」
意識が逸れた一瞬、するりと彼女の腕から脱け出した。
注意深い手刀の一撃でビベカを気絶させる。
芝の上に彼女を横たえ、武器屋の裏手に繋がれていた馬に飛び乗った。
姿勢を低くして曲がりくねった道を一気に駆け抜け、橋を渡り、入り江を見下ろす丘まで一気に駆け上がる。
一度だけ、皓々と月に照らされた海辺の村を振り返る。
さらばゴーン・コーブ、さらばビベカ。
……
…………
かつて感じたことのない思いになぜか歯軋りし、感傷を荒々しく振り払って俺はただ馬を飛ばした。




  パ ッ ク ス 港 ま で 8 0 キ ロ   .
(つづく)