ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

騎士 ドリア(弟)

【パラグラフ280→→→168:ゆらりワイルドランドの旅 血煙殺戮野獣館の事件簿・中編:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



翌日からまる2日間、馬車はひたすら通商路を走り続けた。
海岸から離れるにつれ、僅かな草木も生えぬ荒野が広がっていく。
「しかし酷いな。まるで刀傷だ」とギャノン。
ラクランの秘密警察にやられたのか?」
ハルボーグの顔の傷を騎士が手当てしているところだ。
「とんでもない!港の兵士ですよ。秘密警察相手じゃ命が幾つあっても足りません。ねえ、ビベカさん」
「ええ。奴ら、後ろ盾の無い者には本当に強気だから」
「…………オレタチノ、コトカ」
「あ、あー…違うわ。嫌味のつもりじゃあなかったのよ?本当。本当」
俺はパーションと話をしていた。
「この旅、パーション師もソマーランドから来なさったですだか」
「ええ。おかげで教会に運ばれた怪我人の手当てなども見慣れてしまいましたね」
フードの奥の表情はどこか哀しげだ。パーションも俺も、他の乗客にソマーランドで始まった戦争のことは伝えていない。
その時だった。
大きく馬車が跳ね、耳障りな音を立てて引きずられながら急停止した。御者がやってくる。
「轍に車輪が嵌り込んで割れちまった!あんたら、車輪の交換を手伝ってくれるかい?」
「力自慢の見せ時ですね、ロルフさん」
ハルボーグに話を振られ、早くも俺は失言を悔やむことになった。



全員で外に回り、小さな木の幹を梃子に馬車を持ちあげる。予備の車輪を取り付けるのは御者だ。
力自慢を名乗ったロルフこと俺も、カイ・マントの裾をからげて馬車の一番近くに陣取る。
どこからどう見ても近在の百姓だ。今まさにカイの擬装術を極めつつあるのだ…と思いたい。
「ププ…腕白でもいい、たくましく育ってほしい」
「いやはやビベカさんには敵いませんですだ……パーション師もこのスタイルどうですだか?服が汚れずにすむですだよ」
「ご遠慮します。私、肌が弱いので」
苦笑した牧師は袖もまくらず、それどころか相変わらずフードを被っている。
神々しいまでに全身にやる気の無さが満ち溢れていた。
主に俺と騎士2人の力で、声を掛け合いながらゆっくりと梃子を動かしていく。


不運はそのとき起こった。
いきなり馬が足を蹴りあげ、跳ねあがった木の幹が俺を吹き飛ばしたのだ。 体力点2点 を失う。
「大丈夫かロルフ!!!」
「………」
騎士たちが駆け寄ってきた。相変わらず無言のままドリアが俺を見下ろす。
こいつはいわゆるアレだ。内気と書いてシャイガイと読む類なのだろう。
よしよし、いいから手を貸せとアイコンタクトで伝えてやったところ、見事なまでに無視された訳だが。
……アクション・チャートの抹殺リストに加えておくことにする。


だが、御者はさらに運がなかった。
車軸を嵌め終えた直後だったので、いきなり走りだした馬車に轢かれてしまったのだ。
末期の台詞は「 事故ではない……私は見た…… 」だった。



カイの第六感は、何者かが事故にみせかけて殺そうとしたのだと告げていた。
……御者ではなく、この俺を。

(BGM:サスペンス劇場のジングル。ここで一旦CM)