ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

『騎士 ギャノン(兄)』

【パラグラフ249→→→280:ゆらりワイルドランドの旅 血煙旅情殺人拳の事件簿・前編:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



言いようもなくグダグダだった前回だが……あえて過去を振り返るのはやめよう。
いいんだ、自己紹介が変だって。人間だもの。(みつおッ面で)
大体、迂闊にカイ戦士などと名乗れる訳が無いのだ。
洟を垂らし、それっぽい方言を自在に操りつつ、近在の百姓に擬装を試みる。
お誂え向きに丸腰なのも、擬装に一役買っているとあえて自分に言い聞かせたい。
……俺以外にも変なのが混ざっているが、順に紹介しよう。





ギャノン(兄) ドリア(弟) はともにドゥレナー国の騎士。
それも精鋭として知られるホワイトマウンテン騎士団に所属しているという。ルックスもイケメンだ(右上参照)。
弟はおそろしく無口だ。マグネタイトが尽きそうなのか?



ハルボーグ は太鼓腹を揺らして歩く姿が爽やかな恰幅よい商人だ。
もっとも、いまでは鼻が腫れあがり、額や頬にひどい傷を負っている。
没収された積荷の事でラクランの手下と揉めたのだとか。



フードをかぶった内気そうな牧師が パーション 。同じソマーランド人ということで親近感が湧く。
前回…いや夢の中では彼に出国税を負担してもらったのだった。いいカモ奴っぽい。



ビベカ にも覚えがある……正確には冒険者らしからぬ美貌に。
一見するとたおやかな雰囲気ながら、隙のない物腰は確かに修羅場慣れしているようだ。





俺の視線に気づいてか、ビベカがカイ・マント越しに俺の腕を触ってきた。
「ロルフって百姓にしちゃたくましい腕をしてるわねぇ」
「そ、そうですだか?」
「ええ。剣術で鍛えた者の腕って感じ。本当はお忍びでドゥレナーに向かう剣士様とか?」
……実に、侮れない。
他の4人も興味津々の様子だ。
だがビベカが女冒険者なら、こっちは擬装に長けた練達の詐欺師カイ戦士なのだ!
んで。
上腕二頭筋には自信がありますだ。村の収穫祭のスモウ・レスリングじゃヨコヅナなんですだよ?」
「スモ・レスリング……?聞いたことないわ。格闘技かしら、それ」
「ま、まさか。踊りですだ……踊り……うん、そうそう、そんな感じ……」
「ふぅーん。ま、いいわ」
そう言ってビベカは俺をにらみつけた。
「いいこと?ロルフ覚えておいて。私は最も高い報酬を出す者のために働く、有名な冒険者なの。だから、私を雇うつもりがないのなら、アホの子みたいに人の顔をじろじろ観察しないでちょうだい」
なんだこの野郎……じゃねぇ、この女はよォォォ……!
普通いきなり初対面の相手によぉ、セレブ風ふかすでございますかァァ!?
ぶっちゃけ多感な俺はプツンときた。
きたんだが……ここでキレたら『善良で朴訥な百姓のロルフさん』っつう擬装がばれちまう。
クソッ、クソ、クソッッ!!!
「あ、あー……うん。参っただなあ。悪かっただよ、ビベカさん」
すげえ大人対応の俺。脳内ではアカデミーの主演男優賞とノーベル平和賞のダブル授賞式が絶賛開催中だ。
洟を2割増量で垂らしつつ、いかにも小心者ぶって頭を掻いてみせると、馬車に和やかな笑いが巻き起こった。
一緒に笑いつつも、アクション・チャートの余白に抹殺リストを作っておくことを心に誓った。


夕刻になり、いつぞやの海岸道路沿いの宿屋に着く。
今度は切符 もあるし、金貨だって 残り14枚 。1枚払って堂々とご宿泊できる身分。
暖かい個室で寛ぎ、夕食は買わずラーヌマの実 で腹を満たし、ぐっすり眠って英気を養った。
この先は、カイの狩猟術さえ役立たない不毛の荒野、ワイルドランドを横断する旅だ。

(つづく)