ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

雨のラガドーンはどんよりしていた

【パラグラフ37→→→10:駆け足の滞在:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



昼のラガドーン市は、ぐしょ濡れの古雑巾を思わせた。
西門から三方向へ伸びる街路を霧雨の帳が煙らせる。どの通りも活気がなく薄汚れているばかりだ。
適当に、ウェストゲート通りを北へ歩きだす。
右手に明るいオレンジに塗られた扉。なぜか注意を引かれ、扉の前に立った時、カイの第六感が危険を告げた。
ラガドーンに関する記憶を探り、恐るべき真実を思いだす。
この扉こそ悪名高いラクランの秘密警察サイレントブラザーフッドの本拠地―― 密告と拷問による自白の温床―― なのだ。
素早く扉から離れて北へ走り、東のベガー街へ飛びこんだ。
ここは老若男女を問わず、施し皿を持ち襤褸をまとった人々があふれかえる貧民街だ。
早速あちこちから施しを求められる。

―――ソーサリーなら、ここで金貨をやり(それも5枚は)、見返りにアイテムを得るシーンだろう。
だがこの作者はぶっちゃけた話意地悪だ。それはすでに歴史が証明済みッッ!!
金貨をくれてやったが最後、暴徒と化しかねない……
とはいえ仮にアイテムでも逃がせば、俺は一生自分を許せないだろう……
ハムレットばりに煩悶したあげく、冷や汗をかきつつ金貨3枚を施す。


「金貨をもらうと彼らは礼を言ったが、さらに多くの者がやってきて金貨をせがむ」



………それだけ、なのか?!
今日に限って随分あっさり味だな!!!



いや、暴動起こされても困っちゃうわけだが。
金貨3枚 を失い、乞食をふりほどくのに時間をロスし、俺はふたたび足を速めた。
いかにもな名前のブラックナイト街へ道を折れるが、巡視隊(巡視隊とは名ばかりで、実質ラクラン配下の破落戸だ)がやってきたので店に飛びこんでやりすごし、店内にあった地図を暗記してセージ街から曲がりくねった路地を進み、唯一このけちな港町の東西を結ぶラガドーン橋の混雑ぶりに辟易しながら石畳のイーストトレードを突っ切り…………



「パックス港行きかい。金貨20枚 だよ」「1枚クレ」「ほらよ」



聞き覚えのある会話をすませ、俺は切符(特別な品物)を懐中にしまう。
がらがらと走りだす駅馬車の背後で1時の鐘が鳴りわたり、ようやく一安心した俺は馬車のなかで午睡を始めた。
……武器 を買い損ねたことには、当然気づきもしなかった。

(つづく)