ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

海岸道路はワイルドランドの縁を走る

【パラグラフ312→→→37:滞在期限・1時間:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



木から降り、手をあげて馬車を止める。
手綱を引いて馬をなだめた御者が、帽子の広いつばの下からじっと俺を値踏みする。
「この駅馬車はどこに向かっているんだ?乗せて欲しいんだが」
「ラガドーンだよ。昼までに行かなくちゃいけない。料金は金貨3枚 だけど、屋根の上なら1枚 でもいいかな」
冷たい雨が降りつづく空を見上げ、思わず身震いする。

金貨3枚を払って乗り込んだ馬車の中は暖かく乾いていた。
濡れたカイ・マントの滴を切りながら、乗客を素早く観察する。
いかにも人の良さそうな中年の女が2人に、鼾をかいて座席を占領する男が1人だ。
男の鼾と呼吸のどちらを先に止めてやろうかと悩んでいると、女達の片方が自分のバスケットを床に置いてくれた。
ちょうど手頃なスペースなので、遠慮無く座らせてもらう。
道中、俺は彼女達からラガドーンについての話を聞きだした。
多くは大君主キリーンの死後、跡を継いだ息子ラクランについてだ。
ろくでなしとは聞いていたが、近隣の沿岸では海賊行為を働き、市内では彼の秘密警察がその無法をさらに助長しているのだという。
「悪いことは言いません。できるだけ早くラガドーンをお発ちなさい」

馬車に揺られつつ、俺は手に入れたばかりのラーヌマの実を割って食事をとり、彼女達にも一応のお裾分けをする。
やがて、遠くで鐘の音が鳴りだした。
疾走する窓の外にラガドーンの煤けた外壁が広がる。
12回の鐘が鳴り終える頃、馬車はラガドーンの西門をくぐりぬけて港町に到着した。
パックス港への道のりを女たちに訊ねてみる。
街の反対側、東門の駅馬車乗り場から定期便が出ているのだそうだ。
「パックス港行きに乗りたいなら急ぎな」
話を聞いていたのか、御者が首を突っ込んできた。
「次のは1時間後に出るよ。それを逃がすと数日待つだろうね」
彼らに礼をいい、俺は石畳の歩道に飛び降りた。この港町特有の汚水の臭いに気がつく。
荒れ果てた正面の家には、錆びた看板が打ち付けてあった。


ラガドーンへようこそ


リミットは1時間。
この危険な街で速やかに武器を手に入れ、パックス港行きの馬車に乗らねばならない。

(つづく)