ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ32→→→213:ラガドーン〜ゴーン・コープ:(死亡・3)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



硬直して人語が喋れなくなった俺の分までさりげなく払ってくれたのは、内気そうにフードを被った牧師だった。
「好意に報いていただく機会は、この先いくらでもありますよ」なんて洒落たこと言いやがる。
さすがファンタジー世界でいけしゃあしゃあと牧師を名乗るだけあって器が違う。
財布の中身も心も広大無辺だ。
大いなる慈愛がいつかきっと貧乏人と世界を救うと思う。特に前者。 
増水した川を越え、さらに進んでいく馬車のなか、自己紹介した俺たち5人は自然と打ち解けた。
中にひとり完全武装したナオン冒険家がいて、恋と冒険の波瀾万丈の物語をエンドレスで拝聴すること数時間。
―――ダークロードは今頃どこまで進軍しているのだろう。
馬車に揺られ、荒涼たる海岸線を眺めつつ、俺はハマーダルの紋章 を握りしめた。



夕暮れ、駅馬車は海岸道路ぞいの宿屋に停まった。
宿泊料は馬車の乗客が金貨1枚 、ほかの客が金貨3枚 。なるほど、宿泊料こみであの値段なのか。
何食わぬ顔で宿屋に入りかける俺に、御者が切符を見せろと言ってきた。

・パックス港までの切符をもっていれば、346へ。
・もっていなければ、156へ。

再び到来した 絶 体 絶 命 。
できる限り爽やかな笑顔を作って156へ進む。



………激怒した御者に宿から叩きだされた。「ここからは徒歩で行け!!」だと。
「トホホ……」
こんな時でもユーモアの精神を失わない健気な俺。言うだけは言ってみた自分を褒めてあげたい。
そして御者はクスリとも笑わなかった。
旅館に泊まる金も当然無いので、馬小屋に行き、隅っこの藁束を分けてもらい冷たい夜風をしのぐことにする。
つくづく馬小屋に縁のある任務だった。ジーザスの爆誕に立ち会う日も近い。
明日からの旅をどうするか悩みつつ、寒さに震えながら眠りに落ちていく。
深い眠りだった。
―― 俺が朝を迎えることはなかったのだから。



夜陰にまぎれ、何者かが俺の喉をかっさばく。
血飛沫が飛び散り、断末魔の息の下、俺は見覚えのあるシルエットに手を伸ばし……そこで息絶えた。


「君の命と使命はここで終わりとなる」



『ローンウルフ3人目 再起不能(リタイア):死因 暗殺  →To be continued 』
(つづく)