ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

居酒屋の主人。圧倒的で言葉も出ない

【パラグラフ182→→→276:モテモテ狼:(死亡・2)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



追跡術が、広場にもじき警備兵が来るだろうと教えてくれた。
治安の悪いラガドーンでは、夜な夜な警備兵が手当たり次第に住人を逮捕するのだ。
さっさと居酒屋に戻ることにする。
カウンターの向こう側にいる店主は「ラガドーン者特有の荒々しい口調で話」すらしいが、イラストのせいか雰囲気が違う。
大君主キリーンが死んで以来、この街では『泥棒息子』ラクランの圧政が続いているらしいのだが、
「重税に文句を言う人はネェーッ!背中に短剣生やして海に浮かんじゃうのよォォーッ!怖いわンァァーッ!!!」
……いや、お前の風体が一番怖いから。
今や第二の天性となったツッコミをこらえていると、大兵肥満の偉丈夫は見事な禿頭を光らせ、しゃなりしゃなりと豪快な内股歩きで別の客の前に行ってしまった。
ここに泊まるのは生命のみならず人間の尊厳とかの重大な危機だろう。


部屋の中央では金を賭けた腕相撲が大盛況だ。
ここはひとつ連中から小銭を巻き上げてやるか……?
そこへウェイトレスが近づいてきた。
「気をつけてくださいね。あの大柄な人、相手の腕まで折る悪魔のような人なんです」
「そりゃあご忠告どうも」
低く野沢那智*1で返事しつつ脳内でめまぐるしく思考する。
これはアレですか?
2巻開始から不運続きな俺に対するドッキリですか?
いやいやお待ちになって俺?
そういや死んだ師匠も「今こそカイ戦士がモテるんじゃよー!」とか俺を勧誘するときに言ってたようなそうでないような。


「あー…どうして君は俺のことなんか気にかけてくれるんだい?」
「オイタをしかねない可愛い男の子には、早めにコナかけとかなきゃって」
maji?
こんな場末の酒場で、出会い頭にナオンにモテていますよ俺?
やはりカイの教えがなせる業なのか?
有り難う死んだ師匠!!!(夜空に師匠の笑顔でキメ)


「……とうちのマスターが申しておりました。伝言、伝えましたよ」
………ッッ!!!!!


やはりというか案の定そういうオチだった。
あっさり崩れ落ちたカイ戦士=モテという図式。
というか巫山戯んな死んだ師匠。返せ俺の修業時代。


振り向けば、屈強な店主が巌のような手に握った黄色いハンカチをぶんぶん振りまわしていた。
………その仕草、似合うなァァ。

(つづく)

*1:代表作:刑事ナッシュブリッジス