ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

nacht_musik2005-06-29

【パラグラフ1→→→348:不穏な出帆:(死亡・2)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



近衛兵に見送られて幌馬車に乗り、ホルムガードの通りへ入っていくと、じき海風が幌を揺らしだした。
波止場に止まった艶やかな貿易帆船を御者が指さす。
「『グリーン・セプター号』です。一等航海士のロナンがこの先の『グッド・チア旅館』で待っています」
「ありがとう」
御者に別れを告げ、俺は旅館へと向かった。
だが、旅館の扉には鍵がかかり、窓の鎧戸も下りている。何かあったのだろうか。
唐突に腕をつかまれ、暗闇に引きずりこまれる。
「待ってください!ロナンです!ケルマン船長の命でお迎えに上がりました!」
「……何だと」
反射的に振り下ろした斧の一撃は、ぎりぎりで男の頭蓋からそれた。
木の椅子が粉微塵に砕け、へたりこんだ男の額に、玉のような汗が浮きだす。
差し出す手までが震えているのだ。
男に促されるまま裏口から旅館に入り、がらんとした食堂のテーブルにつく。
「手筈が違うんじゃないのか」
「貴方を船にお連れする前に、カイ戦士であるという証明を見せて頂きたいのです」
念力移動、動物語……即座にいくつかのカイの教えが頭をよぎる。
だが、俺はこの状況が気に入らなかった。
「証明ね……で?」
「で、とは?」
「お前がロナン本人だという証明は?それがはっきりしたら俺も証明しよう」
不審そうに問い返す男の顔を。


返事は……憫笑だった。


素早くテーブルから離れた男が、侮蔑の表情で嘯く。
「どうやら俺もお前も嘘をついていたようだな……まあいいさ。俺の正体を知るまでお前は生きてやしないだろう!!」
「……本物のロナンをどうした?」
「お前もすぐに逝けるさ……同じところに」
男が指を鳴らすと背後の扉が開き、廊下に潜んでいた殺し屋3人が踏み込んできた。
鎧戸から洩れる西陽を受け、薄暗い室内に三日月刀がぎらりと光る。

(つづく)