ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

すべて運び方が決められている

【パラグラフ262→→→184:転落】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



用心棒の剣さばきは雑で、俺はなんなく刃をかわしていた。
なおも襲いかかってくる用心棒。その奥でいやしく視線を俺の腰の革袋に這わせる商人の笑み。
……プツンと、理性の切れる音がした。
二の撃を槍で払いのけ、荒々しく反撃に転じる。
驚いた敵が身を引いた時、俺はすでにタラップから馬車の中に体をねじこんでいた。
疾走する馬車の中で、剣戟の交錯が火花をちらす。



用心棒 戦闘力点11 体力点21


戦闘比は+8 。力の差は歴然だ。
断末魔の刃が俺の肩をかすめダメージ1点を受けたが、激情にかられた俺は痛みさえ感じなかった。
今や立場が逆転し、切り札を失って、商人は顔面蒼白だ。
「て、敵が襲ってきた!」
裏返った悲鳴で御者に警告を与えると、商人はみずから丸窓の外に飛びだした。
あとは追わない。疾走する馬車から飛び降りた商人がどんな目に会うかなど、想像するつもりもなかった。
すばやく空になった御者席にのりうつり、暴れる馬をなだめて停止させる。
すでに日は落ちていた。
「まんま追い剥ぎじゃねーか俺。大戦果だな」
苦笑する俺の手の中には、彼らが残した金貨40枚 、それに食料4食分 がある。その一食を口にした。長かった一日の終わりを彩る夕餉だ。体力点は増えないが、 食事をしなければ体力点を3点失う ことになる。
「腹減ってマイナス3点って、3点も減ったら、俺、飢え死にするじゃねーか」
笑えない冗談だった。瀕死の逃避行はまだ続く。
金貨ばかりが増える毎日。72枚 の宝の持ち腐れだ。ああ、あとボルダクの宝石 なんてのもあったっけな。
馬車の中で横になり、ようやく疲労と睡魔に体をあけわたす。
王都ホルムガードは……はるかに、遠い。

(つづく)