ゲームブック概論

ゲームブックは現在ではほとんど滅びたジャンルです。
最近になって創土社を中心に復活の動きがあるけれど、80年代のブームを知らない世代にはどういうものなのか伝えづらい。なので、傑作と称されるゲームブックの一つから長々と引用してみました。
大雑把なリプレイを通して、ゲームブック独特の特徴を感じてもらえたでしょうか。



1つ目の特色は『物語を能動的に楽しむ』ということ。
冒頭から順に読み進める読者は、話の節目ごとに行動選択を迫られます。勇気ある選択から保身第一の展開まで読み手の数だけストーリーがあるわけです(ベタな表現なのは勘弁)。
同じクリアしても出会う敵が違ったり、最強アイテムを見つけたり、この辺まさにTVゲームと同じで、何度もやりなおす楽しみがあります。



2つ目に『ズルが可能』だということ。
TVゲームの場合、物語を戻って選択をやりなおすのは面倒に感じるし、特にRPG等では、あらかじめセーブしそこなって後で悔しがることも多いでしょう。
その点、ゲームブックは自分で本をめくって読み進めるスタイルだから、気になる選択肢が並んでいたら指の一つもはさんで読み比べられます。戦闘シーンだってサイコロを自分で振ったりするから神様の立場で好きなように遊べる。その分ズルをせずルールにしたがって良い結果を出した時は達成感もひとしおです。
あと、上級者になると『さいころの目を操る』ワザなんてのも存在しました。
多くのゲームブックはページ上部にサイコロのイラストがあって、パラパラとめくればサイコロ代わりになるのですが、これを極めると狙った数字が自由に出せます。
(本にクセがついた、とも言う)
最大の数字12(六のゾロ目)のページに読書ジワができて、いつでも出せたりするわけです。
ルール上はズルじゃない*1ので、これら裏技的な発見やひらめきも物語をコントロールする楽しさにつながっていました。



3つ目は『本』だということ。
ゲーム機と違って気軽に持ち運べ、どこでも取りだして読めます。
(これは一部ウソ。というのも多くのゲームブックは戦闘シーンで鉛筆と紙による計算をさせたり、チェック項目やアイテム管理のためにメモを必要とするから)
それでも、おもむろにゲーム機を取り出すより気分は楽。大人のクセにTVゲームかよ……みたいな白い目を浴びる心配もなし。
特にゲームブックが爆発的に流行ったのは80年代半ばなので、ゲームボーイなんか存在しない時代、お子様はこぞって『外へ持ちだせるファミコン』=『ファミコンソフトのゲームブック』に夢中でした。
もう一つ、本であることのメリットは美麗な挿絵イラスト。やはりTVゲームは意識していたでしょう、当時のゲーム機では逆立ちしても出せないイラストが本を彩り、ちびっ子を夢中にさせました。
例えばポートピア連続殺人事件なんか、ボスとヤスの華麗な雄姿が、
こんな具合に。   ファミコン版とはえらい違いディス。



イラストによる相乗効果は計り知れないものがあって、表紙の絵のよしあしで本の購入を決めたり
決めなかったりつーのもありました。中の挿絵がショボくてムカつくこともしばしば。
BOBちんが買ってきたその日に叩き割る今時のエロゲのパッケみたいなもんです(笑*2

ちなみに、BOBともども朕がもっとも鮮明に記憶にやきつけたのは、このシーン。



151 ―イラスト10

太陽は地平線の下に沈み、陰気なこの町の曲りくねった路地や街路をカンテラが照らし
はじめた。開けっぱなしの酒場の扉からもれる赤い光が、黒い敷石を赤く照らしている。
ほんのすこし通りを進んだところで、坂を上ってくる人の行列にであった。彼らは赤い
マントをはおり、黒いフードをかぶっている。
リーダーは灰色の目をした背の高い男だった。彼は君を見すえ、ゆっくりと手を上げた。
すると他のものたちは立ち止まった。
「おまえは信者か、それとも信者ではないのか」

 信者、と答えるか
 信者ではない、と答えるか
(出展:『恐怖の王国』  ISBN:4938461161

パラグラフ下にイラスト10とかあって、ページの裏にイラストがあるのでめくります。
すると、コレ。
















怖っっ!!!
マジで怖ッッ!!!

言うって、信者だって言うって!!!



ものすごいクオリティ*3のおっさん。ちなみに彼はこれで一般人。主人公よりキャラ立ってます。
お前は青木さやかか。*4
当時目にしたコイツのあまりのトラウマっぷりを忘れられず、ブログ開設にあたり朕は彼を「信者タン」と名づけて当ブログのマスコットに祭り上げることに大決定しました。
ちなみにこの選択肢で『信者だ』を選ぶと、彼(信者達のリーダー)が陰気な声で信者に説法を始め、リーダーをたたえる陰気な大合奏がはじまります。最悪です。怖すぎ。




ええと、なんだ、どこまで話したっけか。真面目に語りすぎたんで、明日のエントリでも、もう少しだら続きします。
次も総論その1の続き。ゲームブックの歴史とか。
(3行ぐらいでまとめる予定)

*1:へへ、へ……

*2:あくまでBOB論。一般の皆さんがどうだかは知りません

*3:顔圧が

*4:顔圧が