ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ84:煉獄の復讐者:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



背後から複数の足音が響いてきた。
すばやく向き直ってバルコニー上部を監視しつつ、山積みになったテーブルの一角に身を隠す。
奇妙に見覚えのある衣装をまとった少人数の一団がやってきた。
人数は6人だ――
男が4人、女が1人。最後の一人は前かがみになって一団の中央を歩き、顔は見極められない。
過去すべての探索行が、その冒険の記憶が脳裏をよぎっていく。


 突然、服装がなんなのか閃き、ショックのあまり息を吸い込む――彼らは
ソマーランドの衣装を身につけているのだ。
 いまや、見て取れる5つの顔すべてになじみがある。


その昔、カイ修道院で学んだソマーランドの犯罪史を思いだす。
彼らは過去の……生きながらダジャーンへの追放刑を受けた最凶最悪の流刑囚たちなのだ。



タイソーの毒殺魔ルビアス・コート、
首狩りの異名をとる追剥ぎファルコ、
カーランディン諸島の魔女アイータ・ネマータ、
殺人鬼ポルゴン、
そして、
人肉喰いにして死人使いの妖術師ガードラ・ヴェズ。


もっとも悪名高き、ソマーランドの最凶死刑囚たち。
シンクロニシティどころの話ではない。ここはどこだかの地下闘技場そのものだ。
いずれもその罪状により、通常の死刑では生ぬるいとされ、トラン魔法使い協会によって影の門から追放された者たちだ。


 息を呑む君の呻きを耳にして、ぎょっとした5対の目がテーブルを
睨み、油を差した鞘から刃が抜き放たれる音があとを追う。
 4人の男と女性アイエーナは、剣を掲げて滑りでてくる。
 死刑囚が左右に分かれて動きだしたため、このグループの6人目を
はっきり目撃し、冷たい悪寒が背筋を駆け下りていく。
 裏 切 り 者 ボ ナ タ ー の冷たく悪意ある目が君の凝視を受け
止め、その姿を信じられずにゆっくり首を振る。


いや。違う。やはり本文は間違っている。
蛇の文様、ローン・ウルフへの襲撃、影の門などの関連から、狼は予測してはいた。
本当にそうなるかどうかはともかく……
この対決を夢見ていたのだ。
なぜ?
問い返すまでもあるまい。
万死に値する裏切り者。
カイ修道院を壊滅に導いた元凶が、死を免れて堂々と生き延びているからだ――ッッ!!
宿敵が、長らく聞けずにいた老いた声で語りかけてくる。
「久しぶりだなローン・ウルフ。お前も失墜してきたとはな」
「嗤える冗談だぞボナター。この俺が、復讐の狼が、神殺しのカイ・マスターが貴様の命を許すと思うのか」
「ほざけ若造が。儂とてこの領域で研鑽を積んでおる。カルトでまみえた時の魔力の比ではないぞ」
「今から、解体する時が楽しみだよ、ボナター」
ボナターの背中がぶるりと震える。
おそらくは凍てつくカルト城塞での雪辱を思い出したに違いない。
あの日あの時、俺は殺気立っていたにもかかわらず「生きて捕らえる」王命を授かっており、手加減せざるを得なかった。
今度は違う。
いまこの日こそは、100%の殺意をもって鏖にできるのだ。
「お互い、長きにわたり、復讐を果たす機会を待っておったのだ。そうだろう、狼」
「その点だけは同感だな。せいぜい楽しませてくれ」
ボナターは歯を軋ませてうなり、殺意にみちた囁きでホールをみたす。
「そしてようやく儂の番が回ってきた訳だ―― 殺せ!」
与えられた命令を熱心に果たすべく、5人の敵が前に踊りでてくる。
腰だめの斧を抜き放ち、そうして―― 戦慄した。




  ソマーランドの流刑囚たち  戦闘力点38  体力点45


 戦闘を避けることはできず、5人全員が死ぬまで戦わなければならない。
 戦闘に勝ったら、120へ。


頭が真っ白になっていく感覚をおぼえ、俺はパラグラフの記述を凝視していた。
間違いだと思い、原書にあたり、ふたたび、舞い戻る。
なん、ですと……!?


ソマーランドの流刑囚たち  戦闘力点38  体力点45


戦闘力点40点のカオス・マスター戦でさえ、アイアンハートの幅広剣 による戦闘力+8の底上げがあったというのに。
まったくの下駄なし素面の戦闘において、戦闘力点38だというのか?
『30点超』どころではない。
これでは『戦闘力点40点弱』ではないか。しかもここで、2連戦?


ウソだろう――――ッッ!?


(つづく)