ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ206→→→パラグラフ306:虐殺師:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



 おそるべき手練だとわかるが、受けた矢傷によって彼はひどく弱っている。
 攻撃は鈍くふらつき、この優位を存分に生かすことができる。


  緋色の戦士  戦闘力点25  体力点30


  敵の体力点を20点以下に減らすことができたら、ただちに、306へ。
  20点以下にするまえに敵を倒したら(つまり自動的に死亡させたら)、123へ。


もはや俺に自由意志はなかった。
ただ殺戮のための機械と化し、全霊をもって敵に襲いかかる。
いかなる使命を帯びてロアストーン の奪取に来たのか。カオス・マスターの配下なのか。
瑣末な疑問などとうに消し飛んでいる。
ただ狼の心にたぎる焔は、抹殺の非情なる意志のみ。
体力を20点以下に減らす? 微温いにもほどがある。
すでにロアストーン を懐に収めた相手だ。
盲いた殺戮衝動が、最も深手を負わせるための最適解を大絶叫する。
殺す殺す殺す殺すころすころすコロスコロスコロスコロ殺す殺すブチ殺す―― ッッ!
己が両腕が千切れ飛んだとしても――
この敵だけは、明確なカイ戦士の『敵』だけは、そっ首刎ねずにはおれんよなァァ!!
念撃を加えて戦闘比+4。
敵は片目を潰され戦力点も下がっている様子。まさしく必殺の好機だ。
毎ターン体力−2を代償に念波動を駆使するなら、戦闘比+6。まずは念撃のみを用いて十分に弱らせ……叩き潰すッ!!
立て続けの乱数表は……
「9」「0」、そして「2」!



秒殺を期して屋根を蹴り、這うように低く踏み込んでいく。
大ぶりの一撃から腰を廻し、遠心力による横殴りの一閃で戦士の左肩を抉る(ダメージ14点)。
のけぞった戦士の上体が戻ってきたところへ――
さらなる踏み込み。
変則的な軌道から密着し、首狩りの一撃を下からすくいあげる(ダメージ16点)ッッ!。


つづく一撃(乱数表2)は、むなしく空を切っていた。
それも当然。
この時すでに、戦士の首は旋転しながら10メートルの高みを舞い――
通り名の如く全身に己が血をべっとりと浴び、首無しの屍体を痙攣させていたからだ――


無論。
どれほど殺戮を尽くしたところで、記述され確定した世界律には抗えない。
初撃を加えた時点で敵の体力は残り16点。
よって、この戦闘でいくらオーバーキルしたところで、奴の最終的な死にはつながらない。
だが、それでも……


 息切れし、血を流しながら、戦士は縄ばしごに飛びつき(中略)……
 パニックが君の心を飲みこんだ。
 ほとんど絶望に駆られ、飛びあがって小袋めがけ一撃を加える(中略)……
 戦士は剣を取り落とし、2つのロアストーン のうち一つは落下して霊廟の玄関
近くに転がっていくが、もう一つはかろうじて戦士が宙で受けとめてしまう。


首無しの死体に、どれほどの使命感が残っていたのか。
死しても使命だけは遂行できるよう、あらかじめ己が肉体に死をスイッチとした遠隔操作の魔術を施していたのか。
復讐の狼にそれを知る術はない。
ただ、トラコスの埋葬地にはロアストーン の片割れのみが残され……
痙攣する戦士の死体が運んでいくロアストーン を睨みながら、ペイドとの別離をこの光景に重ねていた。
奴との再会には実に3年を要した。
だが今は、もう1つを奪取しないかぎり……
何年かかろうが、この黄昏界から帰還するわけにはいかないのだ。

(つづく)