ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ7→→→パラグラフ200:継承者の剣:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



扉を離れて宝物庫の奥に踏みこむと、瞬く間に再び扉が実体化する。
眩い輝き、無数の宝飾がもたらす反射光。
胸躍る財宝のすべてが、工芸品が、貴金属が、磨き上げられた銀の台座から零れ落ち、綺羅星のごとく散乱していた。


 周囲を取りまくこの貯蔵に匹敵する財宝は今まで見たこともない。
 口をあけたまま机の周囲をうろつきまわり、一段と眩く輝くこれら
の品々をふるいにかけ、調べていく。


おおぃいぃいい!
ウォォーーイ!勝手に人を道化扱いしてんじゃねー!!
何だソレ。『口をあけたまま』って。どこのヌケサクだっての。巫山戯んな!
俺はそんな強欲なヤローじゃねえっての!


兎も角財宝漁りだ。
探る。徹底的に捜索する。目的は金じゃあない。真逆にしてそれ以上の代物。
そして、ついにそれを見出す。


 一つの特徴的な品物が、特に君を感嘆させた――ルビーやエメラルドに加え、
磨き上げられたコーリニウムがはめこまれた巨大な幅広剣だ。サイズと重量は完
璧に釣りあっていて、頭上に振りかぶると、鏡のように輝く刀身の奥にこめられ
た強大な魔術の力によって唸りだす。


これだ。間違い、ない。
これこそ、カオス・マスターを倒しうる最後のピースだと確信する。
ロアストーン も発見間近。
決戦を控えた場面だが、ここで、ソマースウォード 持ちとそうでないカイ戦士の間には、戦闘力点に大きな差が生じてしまう。
むろん実際はそうでもない。
徒手空拳でダジャーンに降り立ったこの俺とて、問題なく探索を続けている。
けれど、これが一度世に出たゲームブックである以上、すべてのプレイヤーが俺と同じ練度、経験値のオーナーでは当然ありえない。
初心者どころかまったくの素人カイ・マスターも数多く挑戦している筈だ。
『ソマースウォードがなきゃ進めないバランス崩壊ゲー』等のたまう半可通だっているやも知れぬ。
だからこその救済策に違いないのだ。
手にしたアイアンハートの幅広剣 を、本分表記に従って背中にくくりつける。
扱いは『特別な品物』だ。このあたりも練られていると感じる。
武器ではないので、運用中のデュアドンの銀の弓 も手放さずにすむ訳だ。


かくて準備は整った。
今一度、カイ・マスターの現有戦力を確かめる。
戦力点は念波動まで含めてMAX31点。
幸運なことに上級武術も幅広剣を選択している。アイアンハートの幅広剣 も完璧に使いこなせよう。
体力は40点で満タン。回復薬も戦力増強薬も万全な状態だ。
ならば……
あとはロアストーン の輝きに導かれ、すべての敵を鏖殺するまでと、牙を剥いて嗤う。
小部屋を飛び出し、直感に導かれて階段を駆け上った。
この上は大霊廟の平屋根だ。放射する力の源もそこにある。
俺と同様失墜してきたロアストーン は、屋内ではなく、屋上に雨曝しになっている……っ!
開閉レバーを蹴り開けると、鋭い雷鳴が轟き、突風を巻いて凍気が吹きつけてきた。
円形のハッチに体当たりし、高々と跳躍。
大理石の屋根を砕きながら着地して、腰の斧に手を添える。


俺の敵は、すぐ目の前に、既に立ちはだかっていた。
(つづく)