ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ
【パラグラフ42→→→パラグラフ7:静謐なる奥津城:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。
アイアンハートの大霊廟が、ダジャーン界においては100年ぶり、マグナマンドからの来訪者にとっては史上はじめて、その秘められた内陣を解放する。
中央には、メレドール戦士の彫像。
戦装束を身にまとい、挑戦を求めてに高らかに剣を掲げた誇り高い姿だ。
像の足元を円周で取り囲むのは七つの棺と、空のまま安置された、さらなる七つの棺。
アイアンハート一族の次世代の墓所たる運命も担っているのだ。
皮膚がチリチリと疼いていた。
動悸が声高に叫んでいる。もはや隠しようもないロアストーン の存在を。
しかし、募る焦燥に反して、その正確な位置はつかめない。
この霊廟ではない。
どこかこの近く、だが部屋の外に存在するようだ。
戦士の彫像の後ろ側に、狭い階段が延びていて、天井の丸い入口まで通じている。
階段の脇には、きらめく青い金属のアーチ扉が。
そして……
あまりにも唐突に、おそるべき選択肢が。
ソマースウォード を持っていれば、107へ。
ソマースウォード を持っていなければ、221へ。
忘れていた緊張が、刹那で全身に染み渡っていく。
この表記『ソマースウォード 』の有無は、『方向認知術+チュータリーの教え』と同じくらい重いもの。
ソマースウォード でしか倒せない脅威・強敵の出現予告なのだ。
だが。それにしては何処かおかしい。
たしかに霊性はひしひしと感じるものの、敵の存在・気配が前後の文脈からまったく感じ取れない。
どういうことなのだろう。
いずれにせよ、ここは所持・非所持での強制選択だ。さくっとパラグラフ221へ飛び、
君の影が青い扉に投げかけられると、扉は振動をはじめ、表面が 青白色に曇っていく。堅固な金属板の実体が薄れゆき、ついに完全 に消滅するまでを、驚きに駆られて見守る。 いまや空洞になったアーチの奥には感動的な光景が広がっていた ――アイアンハート一族の、極めて貴重な工芸品をうず高く積み上 げた宝物庫だ。
意外な驚きと歓喜に包まれる。
少なくとも、この話の流れからして、宝物庫にあるのは単純な金銀財宝の話ではないだろう。
むろん、そっちを意識させての罠の可能性も通常は考えられる。
が、この局面に限ってはありえないのだ。
直前のパラグラフ分岐。
『ソマースウォード を持っていない』ことが宝物庫入室の条件なら、戦闘にまつわる何かがあるはずなのだ。
となれば、決戦間近に控えた俺が宝物庫に踏み込むのは必然ッ!
……罠なのか。それとも、天佑なのか。
知りたければ、決断しなければならない。
むろんここでゲームブック業を使い、安全かつ無難に先を見る手もありだろう。
だれ、それでは来る戦いで勝利を奪い獲れない。そんな気がする。
要はテンションの問題だ。
ここは正々堂々、あえて正面突破が重要なのだ。
パラグラフに指をはさむ姑息な真似などせず、秘密の小部屋、宝物庫に踏み込んでいく。
――背後で、不安に駆られるほどの速度で、小部屋の扉が閉まった。
(つづく)